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夢見燈篭

作者: なと
掲載日:2021/09/16

夏の面影は、遠い日の花火。

どうして、あのとき、私は—―――…、刹那の灯。

山彦が、祭り太鼓に紛れて、

おおい、おおいと、子供達を山へ呼んでいます。

―————喰らう気だ。

逃げろうや逃げろや。

舞えや歌えや、神の子たちは、穏やかな顔をして、我知らず。

私は、あのとき、たしかに、人魚を喰ったのだ。

夏の名残は、過去の忘れ物。

人は暖かい陽だまりを探すように夏を追いかけるのだ。

夢の跡形、夢の幻、繰り返す夏のまぼろしに、あ、と声を上げて、

篝火のような瞳の着物姿のあなたが、

紫陽花の手桶を持って、こちらを少し振り返って、止まる一瞬の夏時間。

なにか、いけないことをしているんでしょう?


夢見燈篭。

先祖供養の燈篭に浮かび上がる蓮の模様。

おいてきた夏が、其処にあります。

入道雲が、人に夏の秘密を教えるように、

あなたは、肩甲骨がぎしぎしと痛むんですと、幻肢痛を訴えます。

子供たちは、夏の申し子。

影法師が、子供達を攫おうと街道沿いで踊っていても、ただ、黙っていてください。



夏になると、どうしてあなたを思い出すんでしょうね。

綺麗な竹藪に囲まれた近所の家の姉さん。

横顔が、どこか若い蛇を思い起こされる綺麗な姉さん。

なにか、秘密の恋に苦しんでいるようでした。

遠い潮騒が、私の体をおとなにしても、

遠雷は、こころまでは大人にしてくれませんでした。

雨に濡れて、夏。


夏になると、旅に出る。

悪い事を囁く影法師と共に。

「おまえさんは三途の川は渡れないよ、棺桶から六文銭は盗んでおくから」

天邪鬼な影法師。

それより前におまえさんの魂が欲しいねえ、

そう云って、あめふらしとともに生き胆を狙ってくる、夕暮れの寝台列車。

ふかした煙草が、ふ、と途絶えた。





好きなんです。モノクロームの映画の中で、私のうり二つの双生児は、苦しそうに言っていた。

入道雲、遠雷、陽炎、蜃気楼、かき氷…

宿場町の想い出は、遥か彼方の夏の想い出。

サイダーのビー玉の中に、想い出、閉じ込めておいたよ。

空耳かな?確かに、カキ氷屋のおじさんが、耳打ちしてきた気がして…

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