夢見燈篭
夏の面影は、遠い日の花火。
どうして、あのとき、私は—―――…、刹那の灯。
山彦が、祭り太鼓に紛れて、
おおい、おおいと、子供達を山へ呼んでいます。
―————喰らう気だ。
逃げろうや逃げろや。
舞えや歌えや、神の子たちは、穏やかな顔をして、我知らず。
私は、あのとき、たしかに、人魚を喰ったのだ。
夏の名残は、過去の忘れ物。
人は暖かい陽だまりを探すように夏を追いかけるのだ。
夢の跡形、夢の幻、繰り返す夏のまぼろしに、あ、と声を上げて、
篝火のような瞳の着物姿のあなたが、
紫陽花の手桶を持って、こちらを少し振り返って、止まる一瞬の夏時間。
なにか、いけないことをしているんでしょう?
夢見燈篭。
先祖供養の燈篭に浮かび上がる蓮の模様。
おいてきた夏が、其処にあります。
入道雲が、人に夏の秘密を教えるように、
あなたは、肩甲骨がぎしぎしと痛むんですと、幻肢痛を訴えます。
子供たちは、夏の申し子。
影法師が、子供達を攫おうと街道沿いで踊っていても、ただ、黙っていてください。
夏になると、どうしてあなたを思い出すんでしょうね。
綺麗な竹藪に囲まれた近所の家の姉さん。
横顔が、どこか若い蛇を思い起こされる綺麗な姉さん。
なにか、秘密の恋に苦しんでいるようでした。
遠い潮騒が、私の体をおとなにしても、
遠雷は、こころまでは大人にしてくれませんでした。
雨に濡れて、夏。
夏になると、旅に出る。
悪い事を囁く影法師と共に。
「おまえさんは三途の川は渡れないよ、棺桶から六文銭は盗んでおくから」
天邪鬼な影法師。
それより前におまえさんの魂が欲しいねえ、
そう云って、あめふらしとともに生き胆を狙ってくる、夕暮れの寝台列車。
ふかした煙草が、ふ、と途絶えた。
好きなんです。モノクロームの映画の中で、私のうり二つの双生児は、苦しそうに言っていた。
入道雲、遠雷、陽炎、蜃気楼、かき氷…
宿場町の想い出は、遥か彼方の夏の想い出。
サイダーのビー玉の中に、想い出、閉じ込めておいたよ。
空耳かな?確かに、カキ氷屋のおじさんが、耳打ちしてきた気がして…




