精霊様の怒り
「私が、村長のリャンですじゃ。ポルカがお世話になったそうで...改めてお礼を申し上げます。ユカリさん、でしたかな?」
村長さんもまた、痩せ細っており、差し出された手は震えていた。
その手をしっかりと握り返す。
「はい、ユカリといいます。食糧はたくさんありますので、この村の皆さんの力になれればと。」
「...ユカリさんは精霊の森で出会ったとのこと。その食糧とは精霊の森で取れたものですかな?」
「はい、そうです。」
「で、あれば、受け取れませぬ。今は、精霊様がお怒りなのですじゃ。」
村長さんは、私の手をやんわりとほどく。
「私は3ヶ月もの間、精霊の森に滞在しておりましたが、精霊様の怒りなどあったことがありません。森の恵みに溢れた素晴らしい場所です。」
精霊様どころか神様に祝福されてる森です。とは言えない。
「ユカリさんは、この村の惨状をご覧になったかの?」
「...はい。」
「井戸が枯れ、雨も降らず日照りが続き、土は乾き...精霊の森には天からの光が轟音とともに何度も何度も降り注いだ。これが精霊様の怒りと言わずに何と言いましょう。」
...ん?
日照りと干ばつはどうしようもなかったとして、天からの光が轟音とともに降り注いだ?
あ。
「村長さん、少々外に出ていただいてもよろしいですか?ポルカも。あとちょっと広くて人がいないところに案内してほしいです。」
広場まで来ると、人がいないのを確認して、私はいつもの魔法を使う。
「ライトニング。」
広場のど真ん中に、轟音と共に雷が落ちる。
「せ、精霊様がお怒りじゃーーーー!」
「精霊様ーーーー!」
ああうん、本当すみません。
精霊様の怒り、私でした!
雷魔法、便利なんだもん。何度も何度も使ってたよ。
村長さんもポルカも暫くパニックになってたけど、これは魔法だから、私が起こしてたものだから、と、何度も説明してやっと納得して貰えた。
「このような、雷を魔法で、など、聞いたことがございませぬ...もしや、ユカリ様は精霊様ですじゃ?」
「違います。」
村長さんは「わかっておりますじゃ」なんて言ってるし、ポルカの私を見る目がなんかキラキラしてるんですけど。
「ポルカ?」
「うん!じゃない、はい!」
「違うからね?精霊様じゃないからね?」
「わかってる、ます!ユカリお姉ちゃん!」
本当かなあ?
「とにかく、今からお渡しする食糧を食べても、精霊様はお怒りになりません。私はずっと食べてましたし。村の人たちが元気になるよう、力にならせて下さい。」
村長さんは、少し目に涙を浮かべて、「ありがとうですじゃ...」と言った。
「村長さん、ここに簡易的な火事場を作ってもいいですか?今後も皆さんが使えるようにしますので。」
「は?はい、ですじゃ。」
「錬金」
簡単なものではあるが、屋根付きの火事場を土と木材と粘土で作り上げていく。
「これはすごいですじゃ...魔法...いや、神の御技ですじゃ。」
「ただの錬金ですよ。」
「すごいすごい!」
ポルカがまた嬉しそうにはしゃいでいる。
セイントサーモンとスズナ草を、大きな葉で消毒作用のあるオオバで包んでいくと、火事場に作った大きな蒸し器に何段にもして重ねていく。
うん、そろそろだね。
「はい、セイントサーモンとスズナ草のオオバ蒸しです。たくさんありますから、慌てず食べてくださいね。」
「あ、悪魔の魚...」
「大丈夫、私は浄化のスキルレベルが高いので毒になるものは全部取り出したので安全ですよ。ポルカの保証付きです。」
「みんな!大丈夫だよ!おいしいよ!」
「ね?」
1人の村人の「ぐうう」という腹の音を皮切りに、村の人たちは恐る恐るセイントサーモンを口に運ぶ。
「う、うまい!うまいぞ!」
そこからはセイントサーモンとスズナ草のオオバ蒸しの大盤振る舞い。
あとからわかったんだけど、今回の料理には滋養強壮だけじゃなく、病気が治る効果も含まれてて、栄養不足で病気になってた人たちも、みるみるうちに元気になっていってた。
料理スキルのおかげか浄化スキルのおかげか。
一石二鳥?一挙両得??なんにせよ、よかった。
さあて、村の状態を回復させなきゃね!
腕が鳴りますなあ!!




