開戦
人類連合軍の指揮者である王様の元に、辛辣な宣戦布告文が届いていた。
戦争が、始まるのだ。
側に控えていた私は、王様に進言する。
「王様、この戦いは、攻めても勝てません。攻めなければ、勝つこともできませんけど...」
「ユカリ殿の作った防具、攻めても無駄なほどの耐久力をもつのは、重々承知している。我等は防戦に徹する。」
「...!お願いします!」
ユカリとリュウとレンは、円陣を組んだ。
「戦場のことは、私に任せて。」
「僕は勇者たちを担当するよ。」
「私は、近衛騎士団と...兄上を。」
私たちは頷き合って、「おー!」と気合を入れて円陣を解いた。
「超回復薬に疲労回復薬はもったよね?怪我しないのは無理かもしれないけど...お願いだから、絶対死なないでね2人とも。死んだら私、泣くから。泣いて泣きまくって。とにかく泣くから!」
駄々を捏ねる子どものように、2人に告げると、2人は、ぷっと吹き出した。
「笑わないで!真剣なんだから!」
「わかってる。ユカリさんを泣かすわけにはいかないからね。」
「ああ、私たちは絶対に死なない。必ず勝利を持って、ユカリの元に帰ってくるよ。」
「絶対だよ。」
「「わかった。」」
レンが「あ」と声を出す。
「リュウ、あの件。」
「ああ、そうだったな、ユカリ、リルを出してくれ。」
「?うん、わかった。」
マイホームからリルだけ呼ぶイメージで亜空間を呼び出すと、リルが待ってましたと言わんばかりの様子で、「わん!」と飛び出してきた。
一瞬周囲がざわつく。
「つ、使い魔召喚的なヤツでーす。」
リルすごく大きいし、使い魔召喚なんてもんがあるのかはわからないので、周囲のざわつきは止まらないが、まあいいか。出しちゃったもんは仕方ない。
レンが大きなリルに抱きつき、リュウがわしゃわしゃとリルの頭を撫でた。
「リル。私たちは、しばらくユカリの元を離れなければならない。その時にユカリを守ってくれる存在が必要だ。」
「リル、君のことだよ。僕たちが守れない分、ユカリさんのこと、頼むよ。絶対守ってね。」
リルは、キリッとすると、戦場に響き渡るほど大きく、「アオーーーン!!」と吠えた。
「そっか...リル、よろしくね。」
「ワン!!」
「...時間だ。レン、行くぞ。」
「うん。ユカリさん、あの作戦なら大丈夫だと思うけど、絶対怪我したりしないでね。」
「超回復薬もちゃんと持ってるから大丈夫だよ。」
「ではユカリ、行ってくる。」
「ユカリさんいってきます、そっちもうまく行くこと祈ってるよ!こっちは任せて!」
2人が超竜化と飛翔で飛び上がる。
「2人とも、無事でいてねーーー!任せたよーー!」
2人は軽く手を振ると、敵陣に向かって飛んで行った。
戦争は既に始まっている。
私は私のやるべき事をやる!
「飛翔!」
今にも両軍がぶつかりそうだ。その中心の真上に、私は飛び上がった。
戦場がここになるよう、王様に誘導してもらった。
「弓兵隊、魔法騎士団、遠距離攻撃構え!」
それは、予め、大量の魔石を戦場に埋めておく必要があったためだ。王様の誘導通り、大量の魔石で囲った円の中に、両軍がすっぽりとおさまっている。
「打てーー「シールドーーーー!!!」」
大量の魔石から魔力が溢れ、一瞬にしてドーム状に戦場が覆われた。
放たれた魔法も矢も、一切を受け付けず、霧散する。
「な、なんだこれは!!」
何度攻撃を仕掛けても、魔石から大量の魔力を受け続けている魔力壁は、びくともしない。
人の侵入さえ許しはしない。
「ふう、これで、防戦をする人類連合軍が、うまく武器を壊してくれればいいんだけど。」
戦場では、目論見通り、武器が次々と壊れて兵が戸惑っている様子が見て取れる。
特にオロオロしているのは、主に国に徴兵された一般人だろうか。
オリヴァーさんにそういった状況にあると、話は聞いていた。
国民は、王様の野望を叶えるための道具じゃない。
守るべき家や、家族がいるんだ。
ドラゴニア国民だって、誰一人死なせやしない!
人類連合軍が圧倒的に優勢だ。
鉄の大盾で前進し続けている。
王様が降伏を促している。
このまま、降伏して...!
「くそ、なんだこの状況は!!こい、勇者ども!!この変な壁を破壊し、人間どもを皆殺しにしろ!!」
ドラゴニア国の王様の後ろから、数人の日本人風の顔立ちをした子たちが出て来た。
あの子たちが勇者なのだろう。
「へいへーい。」
「陛下、約束は守ってくださいよー?」
「気に入った女どもは何人でも、何十人でも、好きにしろ!早く奴等を嬲り殺せ!」
「よっしゃ!人間の皆様ー?恨まないでねー?」
そこに立ちはだかるのは...
「この間ぶりだね?バカの犬ども!僕が相手になってやるよ!骨の髄まで恐怖を叩き込んでやるから覚悟しろ!」
次回更新は、7月18日朝8時の予定です。




