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ドラゴニア国

ドラゴニア国ー


「人間どもの国の様子はどうだ。」


 玉座にて、人間の国々を探らせていた暗部に問う。


「...平和そのものかと。我々が戦争準備を水面下で進めているとも知らず、呑気なものです。」

「全くだな。」


 つい先日、追放したはずのリュウが人間とともに現れ、戦争を指摘された時には、よもやと思ったが。


 やはり人間は愚かだ。


 我々亜人族より、ずっと劣った存在。


 それが我々を虐げてきた過去など許せぬ。


 我らは崇められて然るべきなのだ。


 我々が人間の上に立って支配するべきなのだ。


 リュウは、何故それが理解できぬのか。


「引き続き、消えたリュウの行方を探り、人間どもの動向を見張れ。」

「御意。」


 暗部は、スッと消えていった。


「騎士団長をここに。」

「はっ!」


 控えていた近衛騎士が、敬礼と共に走っていく。


 暫くして、騎士団長が謁見の間へと来て、跪いた。


「お呼びですか、陛下。」

「先日手に入れた防具はどうだ。」


 騎士団長は、ぱあっと笑顔になって顔を上げる。


「素晴らしいの一言です、陛下。これならば兵の損害を少なくできるでしょう。...あの、陛下、国民も徴兵なさるとか。」

「ああ、全国民の男は徴兵する。なんだ防具や武器が足りんのか。」

「い、いえ!何でもありません。失礼しました。」

「この時期に大量の質のいい防具が手に入ったのは僥倖であった。もういい、下がれ。」

「はっ!失礼いたします!」


 ふう、と息をつく。


 戦争の準備は万全だ。気に食わないが人間の勇者どもも、戦力としては役に立つ。


 気掛かりは、リュウだ。


 元騎士団長。私が王になる前から人間とも亜人とも、それこそ王族貴族平民の垣根なく接し、国民から慕われていた。


 その力も、生まれ持った超竜化のスキルの恩恵もあり、今の騎士団長と比べて、明らかに強い。


 だから、肉親の情などというものは捨てて、呪って追放してやったというのに。


 呪いのおかげで不幸を招くようになり、殆ど脅威にもならないはずなのに。


 あいつの私を睨んだあの目が忘れられない。


「今更...私の邪魔をするな、リュウ。」


 亜人族が敬われ崇められる世界を、作るのだ。


 人間どもは、過去の罪を贖うべきなのだ。


 世界中の国を、亜人族の支配の下に。


 ドラゴニア国の不穏な気配は、日に日に濃厚になっていく。




「ふう、こんなものですかね。」


 ドラゴニア国の暗部の仮面を脱ぎ捨て、オリヴァーが呟く。


「帰還しましょう。ユカリ様と陛下が待っています。」


 元暗部のユカリの屋敷の面々は、ドラゴニア国に例の防具を流通させ、人間の国が戦争準備に気づかず何の準備もしていないと嘘の噂を流し、たった今、元暗部リーダーのオリヴァーは、王へその旨を伝えてきた。


 仕掛けは上々といったところだろう。


 人間を感知する魔道具があると知っていれば、たかだか数人分、それを妨害する魔道具を調達するのは容易い。


 人間側もまた、戦争の準備が整いつつあった。


「もっとも、ユカリ様いわく、誰も死なない戦争、ですがね。全く、とんでもない主人を持ったものです。」


 


 1ヶ月後ー


「陛下!国境付近にて、多数の人間の反応を検知!確認したところ、大勢の武装した兵が、我が国に侵入しています!!関所砦に到着するのも時間の問題です!」

「なっ!今までそのような気配など全くなかったではないか!それで、向こうの兵力はどうなっている!」

「偵察部隊によると、数えきれないほどの人間が押し寄せていると!推定20万人ほど!」

「20万人!?我が国の兵は国民を全部徴兵しても15万だぞ!」

「陛下!向こうの使者より書簡を預かって参りました!」

「よこせ!!」



 我らは人類連合軍。

 そちらが攻撃してこないのであれば、こちらは和平を申し出たい。

 互いの国民が傷つくことのないように、協定を結ぼう。

 我らは決して亜人族を苛んだ過去を繰り返さない。

 返答を待つ。



「ふざけやがって...!!おい!宣戦布告文を今すぐに用意しろ!!全員第一種戦闘配備!!すぐに配置につけ!王都に徴兵の鐘を鳴らせーーー!」

「「「はっ!!」」」


 カーンカーンカーン


 王都の街に徴兵の鐘が鳴り響く。


「あなた...!」

「おとうさーーーん!!行かないでーー!」

「大丈夫だ、きっと無事に帰ってくる。」


 泣く長男の頭をポンポンと撫でて、支給された防具を着て、剣を持ち、兜をかぶると、姉の長女のビビが、服の裾を引っ張ってきた。


「お父さん、やだ、ビビ、明日誕生日だよ?どうしてどっかにいくの?プレゼント買ってくれるって、約束は?」

「帰ったら、必ず買いに行こう。去年よりすっごいのを買ってやる。」

「すぐ帰ってくる...?」

「...ビビの誕生日には間に合わないかもしれないけど、きっと早く帰ってくるよ。」

「...うん。」


 最後に男は妻を抱きしめると、「行ってくる」とだけ呟き、家を出て行った。


 


 戦争が、はじまったー

次回更新は、7月10日朝8時の予定です。

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