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命を守るために

「戦争を...止める?どういうことだ?それに、一体なんだ、その板は...」


 王様が手を伸ばす。当然、届かないが。


「この板は、鉄というもので、青銅より強く硬いのです。私は、この板を使って、大量の防具を作って、兵士たちに配りたいと思っています。武器は絶対に作りません。防具だけです。...戦争が起こるのを全面的に止める力は私にはありません。でも誰も傷ついたり死んだりさせない。そうして戦意を喪失させたいと思っています。」


 板をぎゅっと抱きしめると、私は宣言する。


「この防具はお貸しするだけです。必ず回収しますし、元の物質は絶対お教えしないので、鍛治スキルをもつ人であっても、鍛治神の加護を持つ人であっても、鋳潰して武器にすることもできないはずです。」


 そのことは、創造知識スキルが教えてくれた。


「誰も傷ついたり死んでほしくないんです。」


 王妃様は、微笑んでいるように見えた。


「やらない善より、やる偽善!王様王妃様!ご協力頂けますか?」


 王様は、少し悩んでいるようだった。


 今現存するどの武器よりも強い武器が作れる。もっとすごいのも作れるかもしれない職人がそこにいて、防具しか作らないし、貸すだけだという。


 喉から手が出るほど、この娘が欲しい。武器も防具も欲しい。他国に対しても強い軍事力を見せつけられる。もしかしたら、大陸全土を支配することだってー


「あなた」


 王様は、はっとする。


「戦争を起こさない、民を守れるのならば、それでいいではありませんか。それ以上は、おそらく、望めば望むほど、身を滅ぼすものですよ。」


 王妃様の包み込むような笑みを見て、王様は、空を仰いだあと、頷いた。


「防具の件、了解した。大事に預かり、戦争に向かう騎士、兵士たちに必ず装着させる。...命を守るために。」


 よかった。わかってくれた!


「王様、お願いがあります。私は、ドラゴニア国の兵士たちにも命を守って欲しいと思っています。防具を配るいい方法はないでしょうか。」


 王様は、ふうとため息をついて、笑った。


「オリヴァーをはじめとする、使用人たちに任せよ。そういった裏仕事は、造作もないことであろう。」

「わかりました、ありがとうございます!!」


 王様は、頷くと、真剣な顔をしてこちらに問いかけてきた。


「だが...向こうには王をはじめとした、武器の力だけではない、手練れがいるであろう。魔法や呪術を使う者も。それに召喚勇者たちはどうするつもりだ。魔法師団や騎士団を一部貸すこともできるが...」

「それは...」


 私は隣にいるリュウとレンを交互に見ると、2人とも力強く頷いてくれた。


「魔法に関しては、お力をお借りすることもあるかも知れませんが、私がなんとかしてみせます。向こうの王様の近衛騎士団などについてはリュウが、召喚勇者については、レンにお願いしたいと思っています。」

「そんなに強いのかね、その2人は。」


 リュウは、王様を真っ直ぐ見て、


「ご心配には及びません。ユカリの期待に応えてみせます。」


 と言い、レンは、


「召喚勇者って言っても、大したことないですから、あいつら。僕は負ける気がしません。」


 と自信満々の笑みを浮かべた。


「そうか、わかった。」


 王様は頷くと、


「最強の防具、届く日を楽しみにしておる。ユカリ殿を信じて、我らも戦争の準備をしておく。...誰も死ぬことのない戦争の準備をな。」

「はい!よろしくお願いします!」

「防具の必要数やサイズなどは、すべてランドに情報を渡す。ドラゴニア国の方はオリヴァーに任せれば心配はない。」


 私たちは最後に礼を言って、城を後にした。





「あなた、立派でしたわ。」

「ふむ、そうだろう?私は歴史に名を残す王に成り損ねた。」

「あら、この国を平和に導くことのできた、賢王として、きっと語り継がれますわ。」

「そう思うか?」

「戦争で、1人の死者をだすこともなく、民を守り抜いた名君に、あなたはなるのです。」

「ふむ。そんな不思議な偉業を成した王として語り継がれるのも、また一興か。」

「はい、そんなあなたを、これからも私は愛し、支え続けますわ。」

「......ならば、よい。」


 



 王城から戻った私たちは、早速精霊の森へ向かった。


 あそこには、鉄鉱山があるのだ。


 戦争が始まるまでに、全ての防具を揃える。


 時間がいくらあっても足りなかった。


 レンとリュウが鉄鉱石を掘って、私が鍛治スキルで加工する。


 だが、鉄鉱石がどうしても不足してしまって、私の手が余ってしまう。


 どうしたものかと考えあぐねていると、レンが、


「僕、助っ人を呼んでくるよ。」


 と、言った。


「心当たりがあるの?」

「うん!任せて!きっと力になってくれると思う。」


 そう言うと、精霊の森を出て行った。


 リュウと2人で作業をしていると、遠くから、「おーい、おーい」と沢山の声が聞こえてきた。


 レンの連れてきた助っ人...にしては多いな。


 よーく見てみると、見知った顔ぶれが次々と現れた。

 

「あ!!」

「ユカリ様ーーー!」

「大精霊様ーーー!」

「助けが必要と聞き、馳せ参じましたーー!」

「またお会いできて光栄ですーー!」


 あの、あの村の人たちだ。


「レン...?」

「いや怖い顔しないでよユカリさん。なんでか、ユカリさんの名前を出したら、みんな着いてきちゃったんだ。」


 村の人たちの目は爛々と輝いている。


「皆さん、私は精霊様ではありません!でも皆さんのお力をぜひ貸していただきたいと思っています!どうか、よろしくお願いします!」


 私はぺこりと頭を下げた。  


「「「「「うおおおおおおおおお!」」」」」


 村人たちの歓声は、暫く鳴り止まなかったのだった。

 

次回更新は、6月24日朝8時の予定です。

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