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邂逅

 リュウが兄上と言った人物は、リュウを呪わせ国から追い出したこの国の王様だろう。リュウと同じ銀の髪色ではあるが、リュウとはあまり似ていない。


 鋭い眼差しで、こちらを見下してくる。


「国境に設置した魔道具に人間が感知されたから、戦争準備中の我が国に来た馬鹿を、手づから始末してやろうと来てみたら、なぜお前がここにいるのだ、リュウ。とっくにどこぞでのたれ死んだと思っていたぞ。」


 リュウが奴隷紋を王様に見せ、跪く。


「呪われたこの身なれど、良き主人に拾われ、命救われ現在まで生き永らえております。」 

 

 そのリュウを見て、王様が、クククと憎々しげに笑う。


「不幸を撒き散らす化け物を拾う、奇特な馬鹿もいたものだ。さてはそいつが魔道具に反応した人間か。そいつと一緒になって、余の玉座でも奪いにきたか。」

「ここには主人の買い物に来たまで、玉座など欠片も興味がありませんよ。」


 リュウが王様をキッと睨みつける。


「リュウを化け物って!「それより兄上、戦争を起こす気ですか、人間の国全てに対して。」」


 リュウを化け物呼ばわりしたことが許せなくて、呪いも解けていると言おうとしたが、リュウに制されたので、私は口を噤んだ。言うな、ということなのだろう。


「そうだ。人間より優れた我らが、人間に二度と虐げられることのないように、我らが同胞のために、戦うのだ。」

「大昔の話です。人間は我々亜人を差別したりしない。兄上が玉座につくまで、仲良くこの国で暮らし、様々な国と貿易し、国は潤っていた。他ならぬ人間のおかげで!」


 王様が心底理解できないといった視線でリュウを見る。


「お前を呪って追い出したあの日も、そのようなことを言っていたな、リュウ。我々は優れた種族なのだ。確かに差別は無くなった。だが優遇もされないだろう。それがおかしいことがなぜわからない。」

「同じこの星に生きる、生きとしいける生き物に、優劣をつけるべきではない!ましてや優遇せよなど、狂ったか!兄上!」


 王様は、虫でも見るかのように、リュウをしっしっと手で払う。


「狂っているのはお前の方だ、リュウ。」


 王様がすっと、扇をリュウと私とレンに向ける。


「目障りだ。勇者ども、奴らを殺せ!」


 その言葉に、店で暴力を振るっていた勇者たちが、面倒臭そうに「へいへーい」と集合する。


 そして、レンを見た勇者の1人が意外そうにレンに声を掛けた。


「ん?おまえ。追放された役立たずじゃねーか。その女の奴隷になんかなってんのか。ははは!最高だな!」

「とってもいい主人に恵まれてね、最っ高だよ、馬鹿の飼い犬でしかないお前らよりよっぽどな!」

「なんだと!?おいお前ら、武器を取れ!奴らを殺すぞ!」


 勇者たちが臨戦体制に入る。


「リュウ、レン、言いたい事まだまだあると思うけど、ていうか私もあるけど、一旦、もういいね?」


 2人が頷く。


「転移!」


 こうして、私たちは一旦王都に戻ってきた。


 マイホームに戻って、それぞれの部屋に入った。


 リュウは毅然と、レンは飄々としてたけど、色々と思うところもあるだろう。


 あの王様の言うことが本当なら、これは本当に戦争になる、勇者たちも戦争に投入されるだろう。


 私は、好き放題に生きていきたい。


 戦争に目を背けることもできる。


 この国を離れて、リュウとレンとリルと新しい国で、平和なスローライフを送るのだ。


 私は、窓からマイホームの、変わらぬ満天の星空を見上げた。


 でも...


 あれ?リュウと、レン?


 2人が外のベンチで何か話しているようだ。窓をそっと開けて聴き耳を立てる。


「1人で兄貴を止めに行くとか言うなよ?」

「それはお前もだ、1人で戦争を止められると思ってるのか。」

「大丈夫、僕、強いからさ。」

「1人で行かせはしないし。...ユカリが泣くぞ。」

「それは、嫌だなあ。」


 2人は、戦争を止める気なのだ。たぶん、私を置いて。


 嫌だ。そんなの、嫌だ。嫌だったら嫌だ!


 リュウもレンも傷ついてほしくない!


 ていうか、戦争なんか起きてほしくない!


 誰1人だって、死んでほしくなんかない!


 私は、好き放題に生きるって決めたんだ。


 だから私にできること。


 私にできる全てで、誰も彼をも守ってみせる!


「リュウ!レン!戦争なんか起こさせない!誰も傷つけさせない!協力して!」


 リュウとレンがぎょっとした顔で振り返る。


 誰も、傷つけさせない。


 その為に...。

次回更新は、6月8日朝8時の予定です。

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