旅立ち
ガチャ
自室から出て、まだ2人が起きていないことを確認する。
リルに癒されたけど、なんかものすごーく気まずいのだ。
昨日は、パッとお風呂に入って、2人と顔を合わさずに、悶々としながら寝た。
いつまでも避けられるものではないが、このままサッと朝ごはんを置いて、アトリエにでも行ってしまおうか。
「まだ、起きてないよね。」
「起きてるんだなあ、それが。」
レンが耳元で囁いてきた!
「レン!あ、おは、おはよう。」
「おはよ。意識してくれてるかなーって思ったら、ワクワクして早く起きちゃった。僕の想像通り、意識してくれてて嬉しい!」
そのまま前から優しく抱きしめられる。
「ちょっ、ちょっと、レン...」
「んー?」
「ユカリ」
思わずドンッとレンを突き放す。
「リュウ、お、おはよう。」
リュウがお揃いのブレスレットを指差して、微笑んでくる。
美形の笑顔、眩し過ぎです。
昨日のことを思い出して、顔が赤くなってしまう。
私は、バッと頰を抑えた。
「ん?レンと何かあったのか?」
「べべ別に何もないけど!」
「ふむ...」
何か言いたそうにしているリュウを見ないフリをして、席に座るよう促す。
「朝食サラダ用の野菜取ってくる!2人は座って待ってて!!」
私はそう言って、畑へ出て行った。
「...何かしたのか?」
「そっちこそ、堂々と抜け駆けしてくれるじゃない。」
「ああ、これか。いいだろう?」
「僕はもっと楽しいことしたから。」
私のいないところで、2人の間にバチバチと火花が散っていたのだった。
「ただいまー!すぐ朝食作るね!」
「ああ、楽しみだな。」
「ユカリさんのご飯、おいしいから大好き。」
朝食を食べ終える頃には、2人へのもやもやした気持ちはなくなっていた。
「そうだ、昨日、ちょっとすぐ眠れなくて。2人の武器と防具を新調したんだよね。着けてみて?」
インナーとなる、上下の着衣はクイーンカイコドーン様製の布をふんだんに使って、魔法抵抗力を高くしてある。
鉄製の防具は、鎖かたびらというかチェーンメイルというか、2人のスピードタイプの戦い方を邪魔しないように、軽いけど強い、軽いけど強い、とイメージしてつくった。
手甲や足甲も同じだ。こちらはチェーンメイルとはいかないけど、軽いけど強い、をイメージして作っている。
2人の武器は、まず、リュウの方は、青銅メッキを施したが、強くて硬い、をイメージして作った、槍。
レンの方は、青銅メッキがどうしても施せなかったのだが、波紋美しき日本刀だ。
「どうかな?リュウの槍は、見た目は青銅だけどより強くなってるし、レンの日本刀は、鉄製だけど、光刀をいつも使う訳にはいかないでしょ?」
2人とも装備を着けて、武器を確かめて、満足そうにしている。
「いい武器だ。ありがとうユカリ。」
「僕は古武術をしていたから、日本刀がしっくりくるよ、ありがとう。」
「服も動きやすくていいな。」
「うん、本当だ。」
「気に入ってくれて嬉しい。」
これで旅立ちの準備はバッチリだ。
私たちは、マイホームを出て、屋敷の皆に挨拶をすることにした。
「オリヴァーさん、皆さん、それにランドさんまで。見送りありがとうございます。」
「寂しくなりますが、皆様がいらっしゃらない間の商売は、お任せください。」
「陛下が最後まで拗ねてましたが、王妃様がいるので大丈夫です。でも早く戻ってきてくださいね。」
「すぐ戻ってきますよ。お店のこと、よろしくお願いします。」
「はい、お任せください。皆様、お気をつけて。」
オリヴァーさんもランドさんも皆も、こちらに向かって揃って礼をしてくれた。
私も慌てて礼をして、手を振って、屋敷を去る。
「王都を出たら精霊の森まで転移する?」
「あ、僕、精霊の森に着いたら、寄りたい村があるんだけど。よくしてもらったんだ。」
「わかった。じゃあ取り敢えず、王都を出て転移しますか。」
精霊の森へ転移すると、レンが「こっちだよ。」と、案内してくれる。
んんんんん?この方向って!
「まさか...」
歓迎!精霊様!
精霊様のおわす村!
精霊様の奇跡!
精霊様へ感謝を忘れない!
など、様々な横断幕が掲げられた村が見えてきた。
「私はここでいい!!」
「え?行かないの?」
「いい!大丈夫!ここで待ってるから行ってきて!」
「私もここで待とう。」
レンは、不思議そうな顔をしながら、「少し行ってくる。」と、駆け出して行った。
「まあ、行けないよな。精霊様?」
「うー、やめてよー、若気の至りって奴だよ。」
村の状況が改善されたのは嬉しいのだが、やらかしまくったから、精霊様と持て囃されて、めちゃくちゃ恥ずかしいのだ。
レンは、ほどなくして戻ってきた。
「もういいの?」
「うん、お礼と、借りた分お返ししてきた。倍にして。」
レンは嬉しそうに、無邪気な顔で笑った。
レンとあの村の間に何があったかわからないけど、よかったね、レン。
「じゃあドラゴニア国に向けて出発しますか。どのくらいかかるの?」
「歩けば1ヶ月以上かかるが、まあ、全員飛べるからな、1週間もかからないだろう。途中の国には寄らないのか?」
レンと私は顔を見合わせて、ニヤッと笑う。
「まずはお米と醤油でしょう!!」
「いえーい!!」
「そんなに美味いなら、私も楽しみだな。」
いざ、ドラゴニア国へ!
次回更新は、諸用のためお休みをいただきます。
5月23日朝8時の予定です。




