王都でデート
「じゃんけん、というものはなかなかに興味深かったぞ、ユカリ。」
「左様で...でも久しぶりに2人で出かけたいなんて、そんなこと思ってたの?」
「ドラゴニア国への旅中は、ずっと3人と1匹になるしな。ドラゴニア国で何があるかもわからないし。な、何より私がユカリと2人き「ぶぁーーー!!!」だ!」
突然吹いた突風が、リュウの言葉を遮る。
「ごめんリュウ、なんて言ったか聞こえなかった。もう一度言ってくれる?」
「い、いや、いい。なんでもない。気にするな。」
リュウは、少し慌てて、だがもう一度は言ってくれなかった。なんだったんだろう。
「じゃんけんで負けたレン、すごく落ち込んでたね。何かお土産買ってってあげよっか。」
レンは、私にとってかわいい弟みたいな存在だ。
実際は年上だし、たまーに、ごくたまーに、ドキッとすることもあるけど、それは精神が身体に引っ張られてる的なアレなのだ!
「ああ、そうだな。ユカリは優しいな。」
「いやいや、レンが落ち込んでたからだからね。さあ、まずは、新鮮なお肉と調味料買いに行こ!そのあと雑貨屋さんと、魔道具屋さんと...」
リュウは楽しそうに、笑顔でうんうんと頷いていた。
粗方必要なものを購入&収納し終えると、レンの好きそうな魔道具が、露店に並んでいた。
鑑定の結果、腕力強化(2)が付与されている。こういうスキル付与レベルの低いものは、王宮から流れてくる失敗作らしく、魔道具屋には普通に並んでいる。
この露店は、その石を少し加工したのだろう。
革の生地で出来たリストバンドのようなもので、銀糸で柄が凝っていて、大きめの黒い石と魔石が存在感を放っていた。
「リュウ!レンこれ好きそうじゃない?お土産これにしようよ。」
「そうだな。いいと思う。」
「お兄さんお姉さんお熱いねえ!弟さんへのお土産かい?」
店員さんが勘違いしてそう声をかけてきた。
「あ、いえ。これは今日留守番してくれてる仲間の...」
「お兄さん!これなんかどう?男性用のブレスレットと、女性用のアクセサリー、使ってる石が同じで、魔法防御(2)のスキルつき!同じ石をカップルで身につける!しかも彼女も守れる!おすすめだよ!お揃いで!どう?」
「私たちはそんなんじゃ...」
「貰おう、いくらだ。」
「リ、リュウさん?」
店主にお金を渡すと、リュウは商品を受け取った。
私もレンへのお土産を手渡される。
カ、カップルって!しかも買っちゃうって!!
リュウの顔がまともに見られない。
だって絶対顔が真っ赤だし私!
「ユカリ」
後ろからリュウが耳元で囁いてくる。
「ひゃい!」
リュウは後ろから先程のネックレスを通して首にかけて止めてくれた。
「いつか、ちゃんとしたものを送るつもりだが...今はこれを受け取ってくれると嬉しい。」
「あ、えっと、う、その。あ、ありがとう?」
ネックレスをつけてくれた手首には、同じ色の石がついたブレスレットがついている。
お、お揃いっ!
「じゃあレンにも!」
「これは私たちだけ。レンにはもう買っただろう?」
「あ、はい、です。」
なんだかすごーく恥ずかしい。気持ちがむにゃむにゃする!
それから、頭と頬がぽーっとして、どう帰ったのかは、あまり覚えてない。
「ただいま...」
「おかえりなさいユカリさん!リュウに変なことされなかった?」
レンが帰ってきてすぐ屋敷で出迎えてくれる。
「へ、変なことは、されて、ない!」
「...そう。」
「わ、私、もうマイホームにもどる!リュウとレンはどうする?」
「私はオリヴァー殿と話があるから、後で鳴らすから迎えにきてほしい。」
「僕は一緒に帰る!」
「そっか、じゃあレン、いこ?マイホーム!」
今は一刻も早く、部屋に帰ってリルのもふもふに顔を埋めてむにゃむにゃした気持ちを晴らしたかった。
「じゃあ、レン。私、部屋に行くね。」
「ユカリさん。そのネックレス、行く時はしてなかったね?」
悪いことをしている訳でもないのに、心臓がドキンと跳ねる。
「そ、そうなの、さっきの買い物で...」
「リュウに買ってもらった?アイツのブレスレットと、石が同じだもんね。」
心臓が更にドキンと跳ねる。
「う、うん。あ、でもね、レンにもお土産が...」
渡そうと収納から出すと、それを取ったレンが、にっこり笑って身につけてくれる。
「僕、こういうデザイン好きだよ?ありがとうユカリさん。」
私はなんだかほっとして、安堵の息を吐いた。
「気に入ってくれてよかった。」
「でもね。」
ドン!
いつの間に壁に追いやられていたのか、レンの両腕と壁に挟まれるように、追い詰められる。
ドクン、ドクン、と、心臓が波打つ。
「やっぱり、こういう抜け駆けは、面白くないなあ。」
レンが、リュウのくれたネックレスに触れる。
「ユカリさんはさ、わかってないよ。僕がどれほど、どんな意味で、ユカリさんを本当に好きなのか。」
「え...」
「わからせて、あげちゃおっかな。」
私は迫ってくるレンにどうすることもできなくて、目をぎゅっとつむる。
「...」
何も、してこない?
恐る恐る目を開けると、レンがめっちゃ楽しそうに笑いを堪えていた。
「レン!!」
「あ、怒った?ごめんね、でもさ。」
レンは私の額にチュッと音を立てて口づけを落とした。
「僕の気持ちは、本当だよ?」
レンはそういうと、自室に入って行った。
私は更なるむにゃむにゃな気持ちを抱えて、リルのもふもふに顔を埋めた。
「リールーーーー!むふぉーーー!」
「きゃいーーーん!」
その後は、毛がぐしゃぐしゃになったリルのご機嫌をとるために、お手製ブラシでずっと毛繕いをしてあげた。
リル、すまん。
次回更新は、5月15日朝8時の予定です。




