嫌だ!
「そんな出鱈目スキルが罷り通るわけなかろう。」
「はあ、でも罷り通っちゃいまして。まあいいじゃないですか!皆様ご無事でしたし!あ、これ、持って来るように言われてた例のアクセサリーです!それじゃ!リュウ、レン、帰ろう!」
ランドさんにアクセサリーをササッと渡して、その場を去ろうとしたが、
「お待ちください。」
そのランドさんにガシッと肩を掴まれた。
「これが国宝に値するものだ、というご自覚がユカリ殿にはないようですね、陛下、王妃様。」
「うむ、そうだな。」
「そうねえ。」
リュウはサッとランドさんの手を掴むと、
「ユカリから手を離してくれ。」
と言ってくれた。
ありがとうリュウ〜。
「ユカリ殿、そなたを王宮彫金師に任命する!国のためその腕を生かされよ。」
「あと王宮裁縫師と、王宮薬師にも任命するわ〜」
え、いや、ちょっと待ってよ。
「えっと、お断りします。」
「なぬ!!」
「まあ私はお店でも買えるからいいけれど。」
王様は立ち上がって、
「この国でも数名しかおらぬ王宮彫金師ぞ!何が不服か!」
と声を上げた。
私とリュウとレンは顔を見合わせて、頷く。
「私たち、もうこの国を出ますので。あのお店はオリヴァーさんに一旦預けて、旅に出る予定なんです。いつかは戻りますけど、いつかはわかりません。」
どこに旅に出るとは言わないけど。
「ならぬ!」
「ならぬと言われましても。そもそも色々な通行許可証や商業許可証もくれましたよね?」
「では、嫌だ!」
「嫌だって、そんなことおっしゃらないでください。できる限りのことはしていきますから。」
「でも嫌じゃもん!」
「あなた、素が出ていましてよ。」
王妃様が王様を、扇でピシャン!と叩く。
「欲しいものが手に入らない子どもみたいに、駄々をこねるんじゃありません。」
それな。
「ユカリさん?ずっと戻ってこないということではないのでしょう?」
「はい。お店を開けっぱなしには出来ませんし。」
「ならよいのです。このアクセサリーは、私どもの自衛のために頂いても?」
「はい、どうぞ。」
「では、相場の20倍、全部で2億ユート払いましょう。国宝としては足りないくらいですが。」
「充分すぎます!!」
王妃様はクスリと笑うと、ランドさんに大袋に沢山入った白金貨を渡し、ランドさんが渡してくれた。
即鞄に入れるフリをして、空間収納にしまう。
「帰ってきたら、また一緒にお茶を飲みましょうね。」
「はい!ぜひ!」
王妃様との会話を最後に、まだ何か言いたげな王様は見ないフリをして、私たちは城を後にした。
「陛下の「嫌だ」には困ったな。」
「全くだよリュウ。嫌だって言われると、どうしたらいいかわからなくなっちゃうよね。」
「子どもみたいな王様だったね〜ドラゴニア国のよりはいいけど。」
屋敷に着いた時には、すっかり日が暮れていて、旅の準備の残りは明日に回すことにし、みんなでマイホームへと帰った。
「わん!」
「リル〜今日は疲れたよー。」
自室で出迎えてくれた愛狼に、バフンと抱きつくようにもたれかかる。
フワフワモフモフ最高!
「それにしてもリル、おっきくなったね。」
マイホームでずっと暮らしていたリルは、いつの間にか私の背を越していた。
ちなみに背中に乗っても軽快に走ってくれる。力も強いのだろう。仔狼だった頃が懐かしい。
ごはんは基本的になんでもよくて、リルを直接的に成長させているのは、魔力だと、魔力が見えるリュウとレンが言っていた。
私は感じることができないが、マイホームには魔力があるというし、それがリルによかったのだろう。
「くうん?」
「なんでもないよ!リル大好き!」
「わん!」
私はその夜、リルと一緒に寝るように大きく改造した快適なベッドで、そのままリルと眠りについてしまったのだった。
次の日、いつもより朝早く目が覚めてしまった私は、リルを起こして、2人で女湯に朝風呂しに行った。昨日は疲れて入り損ねちゃったからね。
ちなみに、リル専用の大きなお風呂も付け足した。思ったより大きくなっちゃったからね。リルは狼だけど、お風呂が大好きだ。
風呂を出ると、2人の言い争ってる声が聞こえた。
また喧嘩してるなー。
「2人ともどうしたの?朝から喧嘩?」
「「違う!!」」
仲良いじゃない。
「ユカリさん、今日は最後の買い出しなんだよね。」
「ユカリ、今日は街へ出かけるんだよな?」
「うん?そのつもりだけど。」
「私と」「僕と」
「「一緒に行こう!!」」
私は首を傾げる。
「うん?もちろん3人で行くつもりだったけど。」
「違う」
「3人じゃなくて!」
「「2人きりで出かけたい!」」
なんですと?
次回更新は、5月11日朝8時の予定です。




