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リュウの気持ち

お待たせしました!

 トントン、と客室のある2階から、レンが降りてくる音がした。


「ぐっすり眠れたみたいだね、もうすぐごはんできるよー。」

「存外遅起きなのだな、レンは。」

「いや、なんていうか、こんなにゆっくり眠れたのは久しぶりだよ。」


 レンがリュウの向かい側の席に着く。


「それならよかった。」


 食卓に、小麦畑の小麦粉から作った、日本人らしいフワフワの柔らかいパンと、うちの畑でとれたとうもろこしと牛子ちゃんからとれた牛乳で作ったコーンスープ、特製サラダに、目玉焼きにベーコンとオーソドックスな朝食を並べる。


「パン、焼き立てだよー召し上がれ!お替わりありだよん。」

「マジで!!いただきまーす!うわ、うまい!!」

「うむ、ユカリのご飯はいつも美味いのだ。」


 リュウが上品に緑茶をすする。


「レンは?飲み物何がいいかな、お茶と牛乳と、あ、スムージーもあるよ。フルーツミックス。」

「スムージーで!」

「はいはーい。」


 レンにスムージーを渡すと、レンの目がキランと輝いた。


「甘くて美味しい!」

「そりゃそうだよ、フルーツミックスだもん。」

「めちゃくちゃ久しぶりに甘いもの口にした気がする...。懐かしいな、こんな朝食も。」

「お米とか醤油とか欲しくなるけどねー。」 

「あー、それは異世界あるあるってやつだな。」

「む。なんだ?オコメ?ショーユ?」

「それはねー...」


 私とレンが掻い摘んで説明すると、リュウは、「ああ!」と頷いた。


「名前は違うが、おそらくドラゴニア国で生産されているぞ。水田で栽培する麦に似た植物からとれる固い粒と、大豆を醸造して作るしょっぱくて黒い液体、となれば間違いないな。あくまで観光用に売っていたもので、調味料や主食になるとは思わなかった。固い粒は穀物祭の捧げ物や豊穣守りとして。黒い液体は、勇者の飲み物といって、しょっぱいが、全部飲めたら力が湧くという宣伝文句で売り出していたな。」


「な、なにーーーー!?」

「そうか!ドラゴニア国だから、ずっと前に召喚された奴が、探し出して栽培やら醸造やら、成功したのか!」


 私とレンは顔を見合わせる。


「行かねばならぬ」

「だね、なんとかこっそり入って買ってこよう。」


 そんな私たちを見て、リュウは肩をすくめた。


「とは言っても、ドラゴニア国はここからはとても遠い。レンと私は国外追放された身だしな。いつか行くとしよう。」

「あー、そっかあ。そうだよねえ。残念だけど、リュウとレンに何かあったら大変だし。」


 と、思案を巡らせていると、


「僕の心配してくれるの?ユカリさん。ありがとっ!」


 レンが抱きついてきた。


「リュウと!レン、だよ!離れてー!セクハラセクハラ!」

「この世界にそんな概念はないよん。」

「......レン。」


 リュウが、ギッとレンを睨む。


 レンは、それを受けてスッと離れてくれた。


 ほっと安堵の息が漏れる。


 高校生とはいえ、身体に精神面が引っ張られているのか、妙に意識してしまうのだ。


「はーい。わっかりましたよ。そんなに羨ましいなら、リュウもユカリさんにすればいいじゃん。」

「にゃ!?」


 何を言うのかねこの子は!!


「なっ!わ、私は紳士としてそのような!!」

「紳士してる間に掻っ攫われても知らないよー。こんな風にね。」


 レンがスッと髪をすくってチュッと音を立てて口づけをしてくる。


「本当に綺麗な髪だね。」

「にゃ!にゃにをする!」

「貴様あああああ!!」

「わー!やめてリュウ!超竜化しかけてるって!家が壊れるーー!」


 そんなこんなで、バタバタ朝食を食べ終えた私たちだった。


「今日はどうするんだ?」

「王都での買い物がまだ終わってないから、まずはそれをしようかなと思ってたんだけど。」

「どんな商品を作るのかだいたい決まったのか?」

「うん、まあね。」


 と、リュウと話していると、レンが待ったをかけた。


「ユカリさん、現役高校生の頭脳を舐めてもらっちゃあ困るよ。地球の知識チート、今こそ僕の出番でしょ。」

「あっ、確かに。」


 レンがにっこり笑って、肩に手を掛けてくる。


「ひゃっ!」

「じゃあ2人でじっくりゆっくり案を出し合おうか。」


 ドンッ!


 リュウの槍の柄の先が床に食い込んだ。


「3人で、だ。」

「ちぇっ、はーい。」


 それから3人であーだこーだと議論を交わして、具体的に作りたいもの、売れそうなものを決めていった。

 

 途中でリュウとレンは何度も喧嘩になりそうになったけど、私はなんだかとても楽しかった。


 必要なものを王都で買い足して、具体的な生産は明日からということにした。


 ご飯を食べて、お風呂に入って、ゆったりとした時間を過ごす。


 明日から忙しくなるぞと思いながら、ベッドに入ろうとした時。


 コンコン。


 と、扉を叩く音がした。


「なーに?誰?」

「私だ、リュウだ。」

「リュウ?どうかした?」


 鍵を開けてドアを開く。


「少し、外で話さないか?」

「え?うん、いいよ。」


 ショールを羽織って、リュウに続いて外に出た。


 マイホームの空には、満点の星空が輝いている。


「綺麗だな。ユカリの作った空間だからだろうか。」

「いや、それはわかんないけど。」


 なんせ周りに空間魔法の使い手がいないから、比べようがない。


「ユカリ、私たちが出会ってから色々あったな。」

「...うん、そうだね。」


 リュウは、そっと私の手を取り、跪いた。


「ちょっとリュウ!」

「...私は、ユカリへの恩を忘れない。あの日の誓いを忘れない。一生傍にいて、ユカリを守る。」


 リュウ...でも...。


「うん。リュウに好きな人が出来たり、ドラゴニア国に帰りたいと思わない限りずっと、だよね。」


 私は寂しいけど、ちゃんと、否定した。


 だけどー


「違う!」


 リュウが、私の手をぎゅっと握る。


 ドクンと、心臓が跳ね上がった。


 心臓が、ドクンドクンと鳴り止まない。


「リュウ...?」


 大事そうにそっと私の手を握りなおすと、優しく口づけを落とした。

 

「私は、ずっと、傍にいる。私はユカリのことがー」


 リュウの切実な顔が、私を見てー


「はいストーップ。何やってるのお二人さん。僕のこと忘れてない?リュウ抜け駆け早すぎ。」

「なっ!レンには言われたくないぞ!」

「はいとにかく帰るよー全く油断も隙もないな。ユカリさん行くよーユカリさん?」

「ふぇ!?」


 ドキドキが収まらない。たぶん私の顔は真っ赤だ。夜でよかった。


「ちっ!行くよー2人とも。」

「う、うん。」

「...るから。ユカリ...。」

「え?リュウ、何か言った?」

「いや...何でもないさ。」


 自室に戻った私は、さっきのことを思い出しては身悶えて、なかなか寝付けなかった。

次回更新は、3月28日朝8時の予定です。

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