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レンの過去

「おお!成功したぞ!勇者様だ!聖女様もいらっしゃるぞ!」


 ん?これは...思い出したくもない、あの時のこと。


 そうか、これが明晰夢ってやつか。


 高校からの帰り道、突然地面が光ったと思ったら、その瞬間、足元の地面がなくなったかのように、落ちていった。


 気がつくと、僕の周りには、中世の王様的な服を着た人たちがいて、知らない男女が数人、僕と同じ制服姿で横たわっていた。


 これまさか、異世界召喚ってやつか。


 ステータスとかあるのかな。


 そう思った瞬間、僕の目の前に、向こう側が透けたボードが浮いていた。


 《名前》石動いするぎれん《年齢》17歳《性別》男

 《職業》剣士

 《称号》異世界転移者

 《総資産》0ユート

 《保有スキル》

 ステータス 魔力感知(5)

 身体強化(MAX) 古武術・剣術(8)

 縮地(9) 風魔法ウインド(8)

 隠蔽(MAX)

 《固有スキル》

 光刀

 《潜在系スキル》

 風神雷神

風魔法ウインドの効果が数倍になる。雷魔法が使える。空歩が使える。移動速度・攻撃速度が上がる。)


称号

・召喚されし者

(ステータス、言語理解など恩恵が付与されたものに与えられた称号)

・勇者

(全ての戦闘技能が常人スキルの2倍、スキル経験値が2倍になる。)


 勇者...?このボードは誰にも見えてないみたいだけど...。


「人間か...?なぜ勇者が人間なのだ。」


 1番奥の更に1番高い王座に座っている人が、忌々しいと言わんばかりの目で睨んでくる。


「陛下、古の秘法です。竜族が召喚されるとは限りませぬ。勇者様は大きな力をお持ちなのです。ここはお気持ちを抑えて貴方様の大願の成就を優先すべきです。」

「...そうだな。おい、勇者ども。私はドラゴニア国の王だ。人間に迫害されし我が国を救ってほしい。この国は人間に支配されようとしている。人間どもは亜人である我々を支配し、奴隷とするつもりなのだ。勇者の大いなる力で我々を救ってほしい。」


 あ、これあかん系の異世界召喚だ。


 僕はげんなりする。


「どういうことなんだ、俺たちは人間だ。同じ人間を攻撃しろとか、勇者とか、意味がわからない。俺たちを元の場所に帰してくれ!」

「おうちに帰りたい...。」

「ここは一体どこなんだ。救うって戦争しろってことか。」


 数人の僕と同じく召喚されたであろう人たちが、騒ぎ始める。


「...これより勇者様と聖女様のお力を測るため、鑑定を行います。お1人ずつ前へ。」


 1人ずつ、僧侶のような格好をした人に鑑定され、「すばらしい」「この力で我々を救ってくだされ」など言われ、皆が皆、結構満更でもない顔をしている。


 そろそろ僕の番が来る。


 やばい!このままじゃ、なんだかわからないどっかの国の戦争の道具として使われる!


 そうだ、スキルに隠蔽ってのがあったはず。


 僕は急いで自分のステータスに、何の力もない巻き込まれた一般人として、隠蔽をかけた。


 よし、成功だ。


「次の勇者様、前へ。」


 僕は少しおどおどしたフリをしながら前へ出る。


「鑑定。...ん?この者は...巻き込まれた一般人?何のスキルもないぞ!!」


 周囲が騒然とする。


「ぼ、僕は、勇者なんてなんのことかわかりません。何の力もないなら僕を元の世界に帰してください。」

「そのような方法はない!」


 マジか。もう帰れない系の異世界召喚だったかー。


「で、では、少しの路銀を持たせていただければ、私のような力のない者は、この城を出て行きます。」


 それでなんとか生きていくしかない。


「その必要はない。力のない者に用はない。国外へ追放しろ。」

「そ、それはちょっと...ねえ?皆さん。皆さんもそれはないと思いますよね?」


 周囲を見渡すが皆目を逸らすか、ひそひそと何か耳打ちしていた。


 そのうちの1人、派手な見た目をした青年が前へ出てくる。


「力がない役立たずなら、それが妥当じゃねえの?俺らと違って選ばれし勇者様じゃねえんだからよお!」


 そういうと、腹を蹴られる。


 身体強化をしていたから痛くも何ともなかったが、足に力を入れてなかったので身体は吹っ飛んで壁にぶつかった。


 何しやがるこの野郎!と言いたいのをぐっと堪える。


 身体強化が使える勇者として、戦場に投入されるなんてまっぴらごめんだ。


「すげーな、この身体強化スキルってのはよ。いつもの何倍も力が湧いてくる。」

「...もうよい、早くその者を国の外に捨てて来い。」

「「はっ!!」」


 こうして僕は、着の身着のまま、一文なしで捨てられた。


 小さな村ではこの身なりが珍しいらしく警戒され、村人たちは冷たかった。泊まることもできず、動物と魔物を狩っても、換金できたのは動物だけだった。


 魔物は冒険者ギルドしか買い取ってもらえないらしい。


 自分の食い扶持を除いてわずかな路銀を稼いで、魔物避けを含む野営道具が買えた時は、やっと木の上じゃなく地面の上で寝れることに安堵した。


 大きな都市に入るには、通行手形や身分証が必要だった。そんな物は持っていない。


 戦争が始まるこの国から離れるため、小さな村を転々としながら旅を続ける。


 そこから何日も何週間も何ヶ月もそんな生活をして、思った。


 次の都についたら、密入国して魔物を売ろう、と。


 そのお金で人間らしい生活をしたいと。


 風呂はないから冷たい川で水浴びするのも、底が擦り切れて穴の開きかけた靴で旅をするのも、ボロボロの学生服も、誰も自分を歓迎してくれないのも、もう、疲れた。


 身体強化や空歩を使えば、塀を乗り越えることなどたやすい。


 僕は案外、追い詰められてたんだと思う。


 だけど僕はそこで、運命の出会いをしたんだ。

次回更新は、3月16日朝8時の予定です。

ワクチンの予定なので更新できなかったら申し訳ありません。

レンの過去はもう暫く続きます。

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