訳ありの理由
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「「...あのっ!」」
「な、何?リュウ。」
「いや、ユカリこそ何だ?」
「「...」」
気まずい私たちを横目に、レンが食後のお茶をすする。
「やっぱ、日本人は緑茶だよなあ。ユカリさん、おかわり貰っていい?」
「あ、うん、いくらでも。」
保温機能付きの大きな急須には、改良に改良を重ねて緑茶に似せた薬膳茶が入っている。
レンは嬉しそうに2杯目を注いでいた。
「「...実はっ!」」
「実はなんだ?ユカリ。私ならどんなことでも受け止める覚悟はできている。」
「リュウこそ。もう隠さなくていいよ。私もどんな事情があっても受け止めるし。」
「「...」」
「ユカリさん、お茶請けとかあったりする?」
「和菓子でよければ。」
「わーい。ありがとうー。」
レンはおいしそうに最近小豆豆に似た豆から作った和菓子を食べている。
「「あのっ!」」
「あーもう2人とも仲良いかよ。お互いペロっと喋っちゃえば?」
「「元はと言えばレンが!」」
「悪かったって。とっくに知ってると思ってたんだよユカリさんのことは。リュウの名前とか僕は知らないし。」
レンが肩をすくめる。
「では、話は長くなるが私から...」
「ううん、リュウ、私から話すよ。でもリュウのこともちゃんと教えてくれる?もうお互い秘密はなしにしよ。」
「わかった。」
「私はね、元々レンと同じ国、ううん、同じ世界で生きてたの...」
私は日本でのこと、異世界転生したこと、神様にスキルをもらったこと、この世界をよく知らない神様が作ったスキルだから規格外であること、リルも神様のプレゼントであること、でも自分は好き放題に生きて生産を極めたい、それで自分なりのスローライフを送りたいなど、長々と話した。
「なるほど。今までの全てのことに合点がいった気がする。」
「黙っててごめんね。」
「いや、それはお互い様というやつだ。私にも黙っていたことがある。レン。ドラゴニア国に異世界召喚されたのか。」
「ああ、そうだよ。」
「古の禁断の秘法...それを使うほど、人間を許せなかったのか。兄上...。」
「「兄上!?」」
レンも私も驚いてリュウを見る。
「私は、ドラゴニア国、元第4王子兼元騎士団長、リュウ・ドラゴニア。呪われ、母国から追放され、誰をも不幸にする奴隷と成り果てた。呪いも奴隷の身も、ユカリに救われたがな。」
「王子様だったのーーー!!」
「げ。あの王様の兄弟か。」
リュウは「はあ」とため息をついた。
「ドラゴニア国は、竜族が王族の亜人族の国で、人間に虐げられた亜人族が集まってできた国だ。その歴史は古い。大昔人間は亜人族を人として扱わず差別していた。ドラゴニア国は人間たちから逃げ出した者たちが建国した国だ。だが、今の人間の国は、差別などしていない。私のように奴隷になるのは亜人差別からではなく理由あってのことだ。人間もドラゴニア国の中にはたくさんいた。だが...。」
リュウは眉を顰めた。
「ある日、ドラゴニア国の第一王妃、現王である兄上の実母が、亡くなった。それも、人間の国の刺客のせいだと兄上は言ったのだ、何の証拠もないのに...。兄上は人間の国へ宣戦布告を行った。私は反対して兄上に逆らった。兄上なのか誰なのか、どうやったかはわからないが、おそらく私はそれで呪われ、国を追い出されたのだ。ユカリに会うまで、不幸を撒き散らしながら生きていた。」
「そんでリュウが追い出された後に、僕らが召喚されたってわけね。」
「そうだ。人間が召喚されたのは誤算だっただろうがな。戦力が足りないと考えたのだろう。召喚魔法で呼び出された勇者は、例外なく強く、ユニークスキルを持つというからな。」
...思ったよりずっとヘビーな話だった。
そんな大変な思いをしてたんだね、リュウ。
「リュウ...ドラゴニア国に帰りたい?王様に復讐したい?」
リュウは首を横に振った。
「ドラゴニア国の民は心配だが、私が行ったところで、兄上の怒りを買うだけだろう。最悪はユカリにまで危害が加えられる可能性がある。私はユカリの側にいる。ずっとな。」
「リュウ...。」
「でも僕らが召喚されたってことは、戦争が起こるってことだよ。ユカリさんは、どうするの?ちなみに僕は、関わりたくないね。だから逃げてきた。戦争の道具になんてなりたくなかったからね。」
「...戦争は、起きてほしくないな。今はそんな甘いことしか言えない。」
「それは僕も同じ気持ちだよ。」
「私もだ。」
部屋は再び沈黙に支配される。口火を開いたのは、リュウだった。
「なに、今日明日で戦争が起きるわけではない。ユカリはそれより、道具を作ったり素材を採ったりして、商売を始めるところだっただろう?今はそれに集中すればいい。」
「へー!何それ面白そう!知識無双なら力を貸すよ?」
「そうだね、好き放題に生きるって決めたんだもん。自分のやりたいことを見失っちゃいけないよね。明日からよろしくね、リュウ、レン。」
「わかった。」
「まかせてよ。」
戦争というものを身近に感じて怖くなってしまったというのが本音だ。
でもリュウの言う通り、今考えたって仕方ない。
できることもない。
今は自分のやりたいことを、貫こう。
まだ商売をはじめてさえいないのだから。
こうして私たちの夜は更けていった。
次回更新は、3月12日朝8時の予定です。




