王都の市場調査
「うーん、うーん。」
「わふう。」
あれから1日経ち、続き部屋を用意してもらった私とリュウは(鍵はかかってるよ)こっそり部屋のベッドとソファーの中身を変えたりしつつ、豪華な部屋で寛いでいた。
ソファーやベッドは、そのうち使用人さんの部屋や応接間や、つまり全部屋を変えるつもりだ。日本人の思いやりとおもてなしの心である。
中身が鉄なので売るかどうかは保留中だ。
そう、今私が悩んでることは、端的に言うと、
「何を商品にしよう...」
である。
アトリエも作った。こんなすごいお屋敷も用意してもらった。防備も固めた。でも売るものが思いつかないのである。形から入るタイプだけど、いわば形しか作ってない状態が今である。
「わふう」
悩みながら、もふもふのリルを撫でるのもまた格別である。
どうせなら、私の店にしかありません!みたいな商品がいいんだよなあ。
と、リュウに相談してみたところ。
「では、王都の市場や店をじっくり見て回ろう。そこにない商品を作ればいいんじゃないか?王都にない商品ならば、この国にない商品と言っても過言ではないだろう。それならば何か商品を思いつくんじゃないか?どうだ?」
「それ採用で!!」
オリヴァーさんたちにその旨を伝えると、快く送り出してくれた。
じっくりゆっくり隅から隅までみてやるぞい!
「こう見てみると、お店も出店もたっくさんあるね、リュウ。」
「王都の市場通りだからな。ここ以外にも個人商店や貴族向けの店もある。しっかり見て回ろう。」
「え?貴族向けの店とか入れるのかな?」
「何か言われたら王立行商許可証入りのギルドカードを見せればいい。逆らえる商人などいないさ。」
「これそんなすごい効果あんの!?」
今更ながら、すごいものを貰ってしまった...。
その後はリュウと一緒に色んなものを食べ歩いて、味付けやら素材やらで色んな話をしたり。
出店は個人が作った小物も売っていて、木工スキルや彫金スキルで作ったものだったから、リュウに勧められたが、ありふれたものは売れん!とか職人的な発言をしてみたり。
怪しげな魔導具店に入ったり、錬金術店に入ってみたり、薬屋を覗いてみたり。貴族向けの店も行ってみたりした。ちなみに許可証の効果は本当だった。
「リュウ、ちょっと疲れたから、あそこの店に入って休もうよ。」
「よさそうな店だな。わかった。」
カフェのような外観で、外のテラスで皆がケーキやらランチやらを食べていた。
お昼を少しすぎていたので、待つこともなくスムーズに入店できた。
「それで、何を作るのか決まったのか?どこかに材料取りに行く必要はありそうか?」
「うん、だいたい。市場で揃いそうな材料は自分でみて買いたいかな。足りない材料の中に精霊の森に自生していたものがあるから、リュウに素材の採取をお願いしたいんだけど。いいかな?自分でも行けるから無理にとは言わないけどさ。」
ケーキを頬張りながらリュウにお願いすると、優雅に紅茶を飲んでいたリュウが、カップを机に置いた。
「いや、私は問題ないが、1人だと心配だな。オリヴァー殿にお願いしておくか?」
「相変わらず過保護だねー。人通りの少ないところには行かないから大丈夫だよ、約束する。」
「それならいいか。この後は分担作業というわけだな。」
「うん、よろしくー。」
そんな会話をしながら、2人で美味しいデザートやランチを食べていると、隣の席から不穏な会話が聞こえてきた。
「...ニアが、戦争を起こそうとしているらしい。」
「......勇者を召喚...弾圧されたのはかなり昔......それで人族の国を......」
断片的にではあるが、かなり不穏な会話が聞こえてきた。
勇者召喚?戦争?そんなラノベみたいな。
いや転生してる私が言うのもおかしいけど。
いずれにせよ関わり合いにならない方がいいだろうな。
私はスローライフがしたいんだ。
「ユカリ?どうかしたか?難しい顔をして。」
「あ、いや、なんでもないよ。ちょっと疲れちゃったかも。」
「それなら材料集めは明日にするか?急ぎ作らなければならないものもないだろう?」
「いや、材料が売り切れちゃっても困るし。でもすぐ終わらせて早めに休むことにするよ。」
「そうか...わかった。」
店を出ると、リュウを転移で精霊の森に送り、セイントサーモンの養殖池を待ち合わせ場所にして、いくつかの材料集めを頼み、王都に戻ってきた。
「さて、私も行きます...か...え?」
「やあ。」
私の目の前には、黒髪黒目の。
「久しぶりだね。話、いいかな?今度は逃して、あげないけどね。」
かつての青年が、いた。
次回更新は、2月20日朝8時の予定です。




