物件探しはランドにおまかせ
ギルドカードに行商許可証や通行許可証を魔法で刻んで貰った後、私はランドさんと一緒に王城の門の前に戻って来ていた。
「リュウーー!戻ってきたよー!」
「ユカリ、待っていたぞ。何も問題なかっただろう?」
「うん、あのね...」
「あなたがリュウ殿ですか、私は執務室付きの秘書官、ランドと申します。これからユカリ殿の店舗の選定に同行いたしますので、よろしくお願いいたします。」
「店舗?どういうことだユカリ。」
私は王様にもらったあれやこれやの話をした。
「なるほど。とてもいい褒美をいただいたのだな。よかったじゃないか。」
「うん!」
「リュウ殿もご同行いただけますか?」
「私は...」
「リュウも!リュウも絶対です!ね?リュウ!一緒に来てくれるよね?」
来いよー今度は来いよー絶対来いよー、と、念を送る。
リュウは私の頭をぽんぽんと軽く叩くと、「ああ。」と同意してくれた。
その後ランドさんは、すぐに3人乗れる、大きめの馬車の手配をしてくれた。
店舗の候補地がいくつかあるので、回ってくれるという。
「ありがとうございます、ランドさん。お忙しいのに。」
と、少し恐縮していると、
「いえ、これも仕事のうちですから、お気になさらず。」
と、にこにこと笑ってくれた。
「そろそろ1つ目の物件に着きますよ。」
「あ、はい!」
「どんな店だろうな。」
馬車を降りるとそこは...
「な、な、なんでお屋敷なんですかーーー!」
「使用人も馬も、かわいいワンちゃんも付いてきますよー。」
周りはめちゃくちゃ貴族街ー!的な場所で、かつ、その中でも絢爛豪華といった佇まいの屋敷であった。
「店っていいましたよね!?店って!」
「こちら王様一押しの物件でして、王城からも近いですし、商談に必要な応接間がまた豪華で使いやすく。是非見ていかれませんか?」
「見ていきませんよ!お屋敷じゃないですか!」
「確かに住居も兼ねていますね。」
ランドさんは、しらっと答える。
「なしなし!ここはないです!リュウ!なしだよね!ね!?」
「うむ...58点といったところか。」
「何基準の採点なの!?」
「まあまあ、では次のお店を見にいきましょうか。ここはキープということで。」
「キープしませんよ!?」
「まあまあまあまあ。」
馬車に戻ると、ランドさんがにこにこと笑ってこちらを見てくる。
「あそこにはしませんからね?」
「次の物件を見てからの判断でも遅くはないですから。」
「次の店はどういう物件なんだ?」
「それは見てからのお楽しみということで。」
馬車に揺られながら、次はどんなとんでも物件に案内されるのかと、ため息をついてしまう。
「ユカリ殿、次の物件に着きましたよ。そう眉根を寄せず、楽しんで参りましょう。」
「また変な物件じゃあないですよね?」
「そんなことないですよ。大丈夫です。さ、どうぞ。」
ランドさんに促されて外に出ると、
「な、なにこれーーー!?」
ビルだ。いや、マンションか?とにかく、この周辺で1番高い建物に間違いなかった。
「こちらは10階建てとなっております。王立錬金術師達の元研究所兼住居になっておりまして。建物の強度は、建材を錬金術を用いて強くしたとかで。とても珍しい物件となっております。」
「いやこんな大きな店舗要らないし、10階もどうやって使うんですか。」
「あ、10階建てとは申しましたが...」
「?」
「1階部分は使わないように、と錬金術師たちから言伝がありました。入ってみましょうか。」
ランドさんに促されて、3人で1階部分を覗いてみると...
「めっちゃひび割れてるーーー!!」
「あーこれ、やばいですね。」
「...0点だな。」
普通の錬金術がどういったものかわからないが、10階もの建築物に耐えられるほどのものは、まだ作れなかったということだ。鉄もないんだし。危険すぎて引っ越したということなのだろう。
「ここは解体指示、と。錬金術師たち減給ですね。この物件は見なかったことにしてください。大変失礼いたしました。」
「はあ、わかりました。」
「...」
私達は馬車へと戻った。戻るや否や、ランドさんが頭を下げた。
「ランドさん!?」
「先程は失礼いたしました。次の物件はあのようなことはありませんから。強度は保証します。」
「は、はあ。」
「ユカリに危険が及ぶような物件は、紹介しないでいただきたい。」
リュウがキッとランドさんを睨む。
「ちょっとリュウ、ランドさんは知らなかったんだから...」
「いいえ、これは王命であります。リュウ殿の言う通りです。本当に申し訳ありません。」
ランドさんが頭を下げ続けているのを見て、リュウも「次はちゃんとした物件を頼む。」と、ため息をついて睨むのをやめた。
「こちらが次の物件です。ここならば、ご満足いただけるかと...!どうぞご覧下さい。」
ランドさんに促されて、馬車を降りる。
「ほう。」とリュウが感心したような声を漏らす。
どれどれー?
「わあ...!」
「どうです?おすすめの物件です。強度も申し分ありません。」
うん、どう見ても。
と・り・で・だあ〜☆
「なんで砦なんですか!店舗っていいましたよね!?」
「こちらは騎士団長オススメの一軒でして。強度はもとより、防備も万全です!」
「そうでしょうね!お客様も寄り付かないでしょうけど!」
「...98点。」
「点数たけえなリュウ!」
それから夕方まで色々案内されたが、結局納得できる物件はなかった。とにかく何かずれているのだ。もちろん最初の物件もキープではなく、なしである。
土地だけ貰えないか交渉してみたが、空き店舗や空き家はあっても、土地はないという。困ったなあ。
次回更新は1月31日朝8時の予定です。




