王城からの招待
「どうしよう、どうしよう、リュウ〜!」
「招待状を見せてみろ、どれ...」
招待状の中には、ぜひお礼がしたいので、拾ってくれた方に王城に来ていただきたい。服装やマナーなどは何も気にしなくていい。
要約するとそのような内容が書かれていた。
「招待を受けているのは、ユカリ1人のようだな。私は王城の入り口まで同行しよう。」
「マジで!?そんな!リュウー!リュウー!」
「心配するな、ただのお礼だ。ちゃんと外で待っているから。」
「王様に失礼なことしたらどうしよー!打首!?打首なの!?」
リュウは私の頭をぽんぽんと叩きながら、半泣きの私の涙を拭ってくれた。
「本当にそんなことになったら、何がなんでもユカリを連れ出して国外に逃亡してやるから...いや、ユカリは転移が使えるじゃないか。すぐに私の元へ逃げ出してこい。」
「あ、そうだった...。」
「な?大丈夫だ。安心しろ。」
「うん...。わかった、私、頑張って行ってくるよ。」
「ああ。待ってるからな。」
こうして私は、一人で王城を訪ねることになったのであった。
ー王城、門の前。
「あの、私は冒険者のユカリと言います。この招待状を、ギルド経由で頂いて。」
門番らしき衛兵に、おずおずと招待状を差し出す。
「そうか、ユカリという冒険者については通達がきているが、念のため招待状の中身を改めさせていただく。しばし待たれよ。」
門番らしき衛兵は、中を開いて確認すると、私に招待状を返してくれた。
「よくぞいらした。冒険者ユカリ殿。中へ入って謁見室へ参られたし。開門!!」
門がギギギと重い音を立てて開いていく。
その先には、貴族らしき服装の人が、頭を下げて待っていた。
「ここから先は、私が案内いたします。執務室付き秘書官のランドと申します。ユカリ殿、どうぞこちらへ。」
「は、はい、よろしくお願いします。」
ランドさんに先導されながら、長い廊下を歩く。
カツンカツンと靴音だけが響いて、一歩歩くのも緊張した。
「緊張なさってますか?」
「はい、かなり。」
「はは、正直ですね。大丈夫ですよ。マナーなども何も気になさらないで下さい。今回は首飾りのお礼に招待させていただいたとのことですから。」
「あの首飾りって、そんなにすごいものだったんですか?」
「そうですね...。いえ、詳しくは王様からお聞き下さい。」
めっちゃ気になるんですけどっ!
と思ったが、空気を読んで黙ってランドさんに付いていく。
「こちらが謁見室になります。どうぞ、冒険者ユカリ殿。お入り下さい。」
ランドさんが指示をして、謁見室の前の衛兵が両開きのドアを開ける。
王座から、真っ赤なビロードの布で道が作られ、その両側には貴族らしき人が何人も控えている。
ランドさんはその1番端っこに加わった。
王座には、王様と、見目麗しき、とても綺麗な女の子が控えている。見た目からするに、女王様ではなく、王女様だろう。
ごくりと唾を飲み込んで、王様と王女様の元へと歩いていく。
王女様の胸元には真っ赤な宝石が存在を主張している、あの首飾りがかかっていた。
王女様の落とし物だったのかな...?
そんな予感を感じながら、王様と王女様に向かって跪く。
「冒険者ユカリです。ご招待に応じて参りました。」
「良い、面を上げよ。」
顔を上げると、王女様がニコニコしているのがよく分かった。美しい王女様が、かわいらしい口を開く。
「女性の方でしたのね。私の首飾りを取り戻してくださったのは。ユカリ様、この度はありがとうございました。いくら礼を尽くしても足りません。」
「ユカリ殿、私からも感謝申し上げる。この王家に代々伝わる首飾りは、とても大切なものなのだ。数年前、私の横にいる姫が隣国への訪問の帰りに、盗賊に襲われてな。優秀な騎士団のおかげで姫は無事だったのだが、その首飾りが盗まれてしまった。以来、見つからず、諦めておったのだ。」
私は、「たまたまです!」と、ぶんぶんと首を横に振る。
「どこで拾ったのか、聞いても良いだろうか。」
私はカイコドーンたちの巣であった洞窟の奥で見つけたことを話した。
「なるほど。その洞窟は、元々盗賊たちの拠点だったのかもしれぬ。カイコドーンたちが住みはじめたことで居場所がなくなり、拠点を移す際に落としたのかもしれんな。なんにせよ、礼を言う。」
「とんでもないです!本当にたまたまですから!」
王様は「ふむ」と蓄えた髭をなでた。
「とは言っても、何か褒美を与えねば私たちの気が済まぬ。なあ姫よ。」
「もちろんです、陛下。」
「何か褒美を...冒険者はやはり爵位か、それとも金か土地か...首飾りに相当する額の報酬がいいだろう。何がいいかのう。」
「どれも要りません!大丈夫です!!爵位も土地も要りませんし、日々楽しく暮らせるだけのお金は自分たちで稼ぎますから!」
私は慌てて却下した。どれをもらっても手に余る。というかめちゃ困る!どれも管理できる気がしない。
「では何か望みはないか?」
「望み...ですか?そうですね...。」
私は思い切って自分の夢を話した。
世界中を旅して、自分自身で色んな素材を手に入れて、自分で加工して、それを売って、また旅に出て。そんな生活をパートナーのリュウとしたいことをだ。
「ではこうしよう。この国での行商の許可証、友好国での行商の許可証、世界中を旅できる王立通行証、そしてこの王都に店を一軒与えよう。いかがかな?」
「あ、ありがたいですが、貰いすぎではないですか?」
「なに、私も姫も、そのような壮大な夢を持つユカリ殿が、世界中を旅して得るものでどんなものを作るのか、興味があるのでな。楽しみにしておる。なあ姫よ。」
王女様は微笑みながら頷いた。
「許可証の類はすぐにギルド証に魔法で刻ませ、店の場所もランドに選定させる。ランド。」
「はっ!」
「わかっておるな?頼んだぞ。」
「お任せ下さい。」
こうして私はランドさんに連れられ、謁見室を出て王城を後にした。




