お蚕様の沙汰
「リュウ、そのまま待っててね。」
「何?待て!危険だユカリ!」
リュウの静止を振り切って、私はクイーンカイコドーンに跪き。
そのまま、クワの葉を大量に取り出し。
土下座をした。
「お蚕様、お納めくださーーーい!私が栽培したクワの葉ですー!好物だとお聞きしました!」
「キシャア...ア?」
クイーンカイコドーンが飛び立つ。
あっという間に私のところへ来ると、クワの葉の匂いを嗅ぐと、私に向かって大きな口を開けた。
「ユカリ!!」
モシャッ モシャモシャッ モシャモシャッ
クイーンカイコドーンが、クワの葉を、食べている。めっちゃ一心不乱に。その顔は感動しているように見える。
「まだまだございます!」
私はすかさずクワの葉のおかわりを出す。
「何!?もっとあるのか!もっとだ!全部寄越せ!」
「「喋ったああああああ!!」」
私とリュウの叫びがシンクロした。
「あ、あの、私の言葉がお分かりになるのですか?」
「妾ほどのものともなれば、そのようなこと造作もない。」
クイーンカイコドーンが「ふん」と自慢げに胸を張る。
「では、お蚕様、お願いがございます。」
「このクワの葉の美味さに免じて許す。申してみよ。」
「マイホームという私の作る亜空間の中に、来ていただけませんか?お蚕様の家とともに沢山栽培しております!ぜひお越しいただき、住んでいただけないでしょうか?」
「面妖な人間よの...我らに敵対しないばかりか、このように美味なクワの葉を作り出せるとは。面白い。」
私はクイーンカイコドーンに頭を下げる。
「何が目的じゃ。」
「正直に申し上げますが、お蚕様方のお紡ぎになる糸を欲しております。」
「本当に正直じゃの。だがクワの葉のうまいこと。行ってみてやらんでもない。」
「ありがたき幸せでございます。では...マイホーム!」
私はマイホームへの扉を開く。
「リュウ、行くよ。」
「...」
驚き固まったままのリュウを押してマイホームに突っ込んで、お蚕様をマイホームにご案内した。
「な、なんだここは、魔力、魔力の塊じゃ!吹く風すらも魔力を孕んでおる!なんと素晴らしい!」
え?そうなの?はじめて知ったんだけど。
「早く妾の住まいを案内せい!」
「こちらです。あ、少々お待ちください。木工。栽培。」
産卵してカイコドーンが産まれてもいいように、小屋をかなりの大きさに拡充し、ふわふわの草を生やす。もちろんクワの葉もたくさん。水場も設置した。
「何かご希望があれば作り替えることも可能ですのでおっしゃってくださいませ。」
「素晴らしい!美味じゃ!ふかふかじゃ!魔力光とあたたかな風が気持ちいいーー!気持ちよく産卵できそうじゃーー!......本当にここに住んでいいのかえ?糸と引き換えなんぞの条件で?」
「もちろんです!ようこそ我がマイホームへ!よろしくお願いします!」
「うむ、よきにはからえ。気持ちいいのじゃあ〜。」
クイーンカイコドーンが小屋の中でゴロゴロし、クワの葉をモシャモシャと嬉しそうに食べている。
「はっ!うっかりしていた。洞窟に残してきた妾の同胞たちも此処へ連れて来てもいいかえ?」
今ギルドに情報がいってるってことは、討伐対象になりかねないな。
「勿論です!」
「感謝する。お前名前を何と申す?」
「ユカリです。」
「ふむ、ユカリ。洞窟の糸はもう要らぬ、欲しいのならばいくらでも取って良い、もちろんこの家でも糸を紡ごう。同胞たちを頼む。」
お蚕様がめっちゃ破格の条件出してきた!
「了解しました!ありがとうございます!」
「これからよろしく頼む。」
「はい!」
こうして無事、お蚕様方をお迎えすることが出来たのだった。
リュウはというと...
「クイーンカイコドーンが、人語...魔物が人語...人間と親しげに...」
最後まで固まっていた。




