口止め
「ふんふふーん♪」
「ご機嫌だな、ユカリ。」
「まあねー♪」
アトリエ完成祝いに、カツを揚げているところだ。残念ながらソースはまだないので、塩をつけて食べることになるが、オーク肉は脂身もしっかりついていて、塩でも充分おいしいだろう。
いつかソースや醤油も作ってみたい。酢はこの世界にあったので、マヨネーズは既に作成済みである。
「マイホーム自体が秘密だから問題ないと思うが、国家機密級のアトリエは誰にも見せるなよ?」
「うんうんわかってるわかってるー♪」
アトリエ一棟ごと収納できるから、いつか店を外に出したい時にそのまま使えることは、リュウにはまだ内緒である。なんか言ったら怒られそうな気がするのだ。
「当然わかってると思うが、空間魔法や、規格外の生産系スキル、鉄のことは、絶対誰にも言うんじゃないぞ。ユカリの身を守るためだ。」
「わかってるってば、大丈ー...あ。」
「あ?」
「鉄のこと知ってる人と、空間魔法のマイホームに出入りした子がいる。」
フェミルさんと、ポルカだ。
「なぜ早く言わない!今すぐ口止めに行くぞ!いくらかお金も必要かもしれん。オークの素材は高く売れる。用意しておいてくれ。」
「わ、わかった。カツは?食べていかないの?」
「ぐ、ぐぬう、た、食べてからすぐだ!」
リュウは説教をしながらうまいうまいと舌鼓を打っていた。どっちかにしてくれ。
「じゃあ、王都のフェミルさんから。転移!」
王都の冒険者ギルドの近く、人気のない路地に転移すると、リュウも私もフードを被る。
「じゃあ行くよ、リュウ。」
「わかった。」
冒険者ギルドの受付で、フェミルさんに受付は自分にと言われていると伝えると、フェミルさんを呼んできてもらえた。
「ユカリさんじゃないですか。後ろの方は?」
「ユカリの冒険者仲間だ。」
「あら。ふふ、ユカリさんも隅に置けませんねえ。」
「それよりそれより、話があるんだけどっ!」
「買取ですか?奥でお伺いしますね。」
以前と同じ場所に通されると、どうぞと言われ、オークの素材を肉以外全て出した。
「これはすごく状態がいいですね。睾丸も貴族の皆様には好評なんですよ。これほど状態が良いのでしたら、色をつけさせていただきますね。」
「それよりさ、フェミルさん、鉄のことなんだけ「あああああああこちらへどうぞーーー!」
部屋の隅っこの方に誘導されたので、黙って着いていく。
「ユカリさん!私のメモを見なかったんですか!?」
と、ひそひそ声で責められる。
「魔石の大きなものと、鉄は、どうしても持っていくなら秘密主義の生産ギルドに持ち込むのがいいと思いますが、鉄なんて持ち込んだらどんな目に合うかわからないので、秘密にした方がいいって!書いておいたでしょう!」
「ご、ごめんなさい、見逃してたみたいです。」
「まさか持ち込んだんですか!?」
「魔石は売ったけど、鉄はやめました。」
「賢明です。」
フェミルさんは、はあ、と大きなため息をつく。
「それで、フェミルさんもどうか、鉄は見なかったことにして欲しいんですけど...。」
「当たり前ですよ!ギルドマスターにも伝えてません!」
「フェミルさーーん!好きーーー!受付がフェミルさんでよかったーーー!」
思わず抱きつくと、フェミルさんは「やれやれ」といった風に肩をすくめたのだった。
「話は終わったか?」
「うん!黙っててくれるって!」
「そうか。口止め料は...」
「そんなものなくても怖くて誰にも言えませんよ。」
「そうか。ありがたい。ユカリが浅はかで面倒をかけた、謝罪する。」
と、リュウが頭を下げた。
その様子にフェミルさんがにんまりと笑みを漏らす。
「ユカリさん、後ろの方はただの冒険者仲間じゃなさそうですねえ。」
「え?」
「そ、そんなことはだな、その、なんだ、ごほんごほん。」
「うん!リュウは大事な旅仲間だよ!」
「......ああ。」
リュウががっくりと肩を落とす。
「ああはいはい、なるほどです。リュウさん、頑張ってくださいね。」
「...ああ。」
そうして私達はフェミルさんの所を後にした。ちなみにオークの素材は全部で80万ユートで売れた。ほくほくである。
じゃあ次はポルカのところだね!




