何事も形から!
ー次の日。
「今日はいよいよアトリエを造ります!!それぞれの生産系スキルに対応したアトリエを1棟ずつ作るよ!」
「ユカリは全ての生産系スキルを持っているんだったか?相変わらずだな。」
「ふふ、まあね。」
食後のお茶を飲みつつ宣言すると、リュウが規格外とも言わなくなったけど、言外にそうだと告げてくる。
ちなみに新しい家で迎える朝食タイムは最高だった!朝食メニューがレアユメインだったのもあるけどー。
「リュウは今日どうする?」
「オーク肉も充分ストックが出来たしな。アトリエを造る機会なんて滅多に見られるもんじゃないし、今日はユカリの作業を見ていてもいいか?」
「いいよー、オーク肉で昼食も作ってあげよう。」
「それは楽しみだな。」
リュウはお茶をすすると、ゆっくりと足を組み直した。
イケメンにもそろそろ慣れてきたけど、絵になるねえ。
「アトリエは全部で7つになるのか?生産系のスキルは、えっと...」
「裁縫、木工、調合、彫金、鍛治、栽培、錬金の7つだけど、栽培はアトリエいらないかな。強いて言うなら、畑がアトリエみたいなもんだから。昨日作っちゃったし。」
「帰ってきたら広大な畑が出来てるんだからな、昨日は驚いた。」
「新しい家はどう?足りないものはない?」
「ない。快適すぎるのが唯一の困りごとだな。」
「なんで?」
「普通の宿ではもう寝られなくなるかもしれないと思ってな。」
と、リュウは肩をすくめた。
私は誇らしげに胸を張る。
頑張った甲斐があるってもんよ!
「では、今度は快適なアトリエを造りましょうか!リュウいくよ!」
「わかった。楽しみだな。」
私たちはそうして家を後にした。
「まずは、裁縫のアトリエ。」
木工スキルで、かわいいサイズの木の家を作り、受付カウンターを作り、壁を作り工房の中が見えないようにする。もちろん行き来が出来るように扉は付けるが鍵付きだ。一流の工房主は、手の内を見せないものなのである。
ていうか足踏み式とはいえミシン鉄製だしオーバーテクノロジーだし見せられねー。
「ミシンを錬金、彫金」
鉄のインゴットをいくつか消費して、手持ちのミシンと全く同じ物をもう一つ造った。アトリエに置いてしまうと、必要な時いちいち取りに来なければならないし面倒だからだ。
大きな部分は錬金、動作部分は魔力制御を彫金済みの魔石で、他細かい部分は彫金スキルで仕上げた。
「いやちょっとオシャレにしておくか。さらに彫金。」
ミシンの柄をちょっと華やかにして。
「木工」
工房の壁に、カラーボックスのように一個ずつ区切られた棚を設置する。ここに手持ちの布を半分ほど収納して、残りは空けておく。
お蚕様をお迎えした暁には、ここにお蚕様製の布が並ぶ予定だ!
充分な採光を取り入れた窓は実は外から見ると中が見えないように細工してある。
裏の出口を作り鍵をつけると、その先はお蚕様のおわす部屋へと続くようになっている。
「裁縫のアトリエ、完成!」
「...」
「どしたの?リュウ。」
「いや、何でもない。素晴らしいアトリエだな。」
そうであろう、そうであろう!
「次は木工のアトリエね。」
木工のアトリエは、先程の裁縫アトリエと違い、シンプルで壁もない。ただ沢山の棚が並んでいる。そこに今日のために作っておいた、魔力制御と木工スキルのコンボで作った木彫りの作品をいくつも置いていく。
値段はお客様に決めてもらうつもりだ。受注生産も承る。家を作ったりしないけどね。本来はこういう木彫りのものを作るスキルなんだとリュウに聞いていたのだ。
「いつの間にこんなに作ってたんだ...。」
リュウが工房全体を見て驚愕している。昨日だよ。
「次!調合のアトリエ!」
ここにはできた薬をいくつも並べた店舗部分を大きく取り、奥に小さな部屋を作って、使い心地のよい机と椅子を用意して、鍵付きの扉をつけた。
だって私の調合スキルは、道具が一切必要ない。
隠れて作れる場所があれば充分なのである。
「調合道具のない調合アトリエ...。」
リュウが眉間に皺を寄せている。
「次は彫金スキルのアトリエ!」
ここには、ガラスケースをいくつもおき、さながら宝石店のように展示部分を作った。宝石が無いので置くものはまだない。エアコンや冷蔵庫を売るわけにいかないし。
なので、彫金で魔法を刻んだ魔石を置こうとすると。
「待て。」
と、リュウに止められた。
「こういう魔石の使い方は普通出来ない。誰に目をつけられるか、最悪王様でも飛んでくるかもしれない。」
と言われれば、無視はできなかった。
奥の部屋を広めにとって、いつか宝石がゲットできた時のために、金銀のインゴットをたくさんいれておいて、彫金アトリエ造りは完了した。
「次は鍛治のアトリエ!」
ここでは創造知識スキルに頼って、鉄を加工し強く出来る工房を作った。火の魔石を大量に使った炉に、煌々と火がついている。鉄以上のものも、鉄以下のものも、加工可能だ。
研ぎ専門のスペースもあるので、リュウの武器のメンテナンスなども出来なくはない。
「武器や防具のメンテナンスはここでユカリに頼めばいいのか?」
と、リュウが聞いて来たが、今のところ鍛治スキル発動だけで思うように研げるので、必要ない。
「いつでもどこでもできるよ?」
というと、頭を抱えていた。
鉄がどんなふうに必要になるかはわからないが、今のところは必要ない。封印である。武器も並んでいない。
「最後に錬金スキルのアトリエ!」
木工スキルで同じく小さな家を作り、ここには大きな煙突をつけた。
「大きな錬金釜を錬金!」
それをドーンと部屋の真ん中に設置して、受付カウンターをつければ完成である。
「錬金スキルで作った錬金釜...だが使わないんだろうな。」
「必要ないからね。さて、リュウ!アトリエ、全部完成だよ!!」
ちなみにこのアトリエは一棟ずつそのまま収納もできる。いつか店を開きたい。それを見越してのアトリエ造りだ。
「...スキルでなんでもできるのに、収納でアイテムも持ち運び放題なのに、アトリエの中は国家機密級の秘密だらけ...」
「リュウ?なんかさっきから、ぶつぶつ言ってるけどどうしたの?」
「...アトリエ、本当に必要か?」
「必要だよ!?」
何事も形からでしょう!




