覚悟と信頼と。
「それで、あんなに極大の雷を落として一体何をしてたんだ?空に浮いてるのをみたぞ?天変地異かと思って心配した。」
るんるんとレアユを捌く私に、呆れ顔でリュウが聞いてくる。
よくぞ聞いてくれました!
「レアユの大群に遭ったんだよ!超がんばってたくさんゲットした!」
「すごくいい匂いがすると思ったら、レアユか。出現しても捕まえるのは難しいからな。それであの雷か。」
ドヤァとレアユの串刺しを見せた私に対して、リュウの反応は淡白だ。
「なんであんまり驚いてないの?」
「ん?ああ、祖国でな、奴隷になる前、よく川の漁に駆り出されていて。招福スキルのおかげで、レアユがよく出現していたんだ。といっても、100匹出たところで捕まえられたのは2匹がいいところだがな。」
「リュウ!!」
私は調理の手を止め素早く浄化すると、抱きついた。
「ありがとう!私のラッキーガイ!いや、座敷童子様ああああ!」
「なっ!なんだ急にっ!」
「うおおおおおおおん!」
リュウの胸にぐりぐりと頭を擦り付ける。
「やめろ!年頃の乙女がそのようなことするものではない。は、恥じらいというものをだなっ!」
「全然お礼にならないかもしれないけど、美味しいご飯、作るからね!」
「あ、ああ、ユカリの飯はとても美味い。楽しみにしている。」
「リュウ」
「なんだ?」
「なんで顔が真っ赤なの?」
「当たり前だろう!離れろぐりぐりするな!」
「やーん、福が逃げるー!」
「逃げない!私のスキルの効果はそんなことでは逃げないから!」
最終的には無理矢理剥がされた。感謝を最大限伝えたかっただけなのにー。いや本当は招福スキルにあやかりたかったんだけどさ。解せぬ。
ぶーぶーと不満を漏らしながら、レアユの調理に戻る。
リュウはまた抱きつかれては敵わないと思ったのか、食卓の席についた。
「何匹くらい捕まえられたんだ?ユカリのことだから、あれだけ派手にやったんだし、10匹は捕まえられただろう?」
「1024匹かな。全滅させてやったぜい。」
「せん!?全滅!?」
私は今度こそドヤ顔をする。
「本当に規格外だな。ユカリは。」
「またレアユを頼むよリュウさん?むっふっふ。」
そうして私たちは、レアユを存分に堪能したのであった。
「木工」
木が倒れてフワリと浮き、思い描いた形に削れていく。
「木工、木工、木工、木工、木工。」
「...私の知る木工スキルと違う。」
まあこちとら神様に頂いたスキルだからね!
「なんでそう色々規格外なんだ?本当に精霊様ってわけでもないのだろう?」
「精霊様じゃないよー。うーん、リュウがどうして奴隷になったのかとか、なんで呪われたのかとか、どことなく気品があって、スキルレベルが高いのはなんでかとか、全部話してくれる気になったら、私も全部話してもいい。」
「......」
「木工、木工、木工、木工、木工。」
全てを話すには、私たちにはまだお互いに、時間が足りない気がした。
「はあ...ユカリにだけ話せというのは卑怯か。私も覚悟が決まったら話す。」
「うん、待ってる。その前に私から離れる事情ができたら、話す必要もないけどさ...その時は寂しいからたまには会いに来てよ?」
「私はユカリから離れるつもりはない。」
「うん...わかってるよ。」
......私の木工木工言う声だけが響く。き、気まずい。
気まずい空気を察したのか、リュウが、私の頭をぽんぽんと叩いた。
...なんか、ずるいなあ。
その後私は、気まずくなることもなく、リュウと楽しく会話を楽しみながら木工に勤しんだのであった。
「よし、こんなものかな。収納。」
大量伐採をして収納しても、この世界ではすぐに若い芽が芽吹き、あっという間に木が育つ。
魔物や動物や薬草のリポップと同じ仕組みなのだろう。
「これで家を作り直すんだったか?」
「うん、材料は木材以外は足りてるから。」
「じゃあ明日からは家づくりだな。俺はどうすればいい?今日みたいに見ているだけではたまらんぞ。」
「じゃあまた狩りをお願いしていい?」
「ああ、任された。」
マイホームへの亜空間を開くと、
「そういえば、ユカリ?」
と、リュウに呼び止められた。
「なにー?」
「この間オークを狩った時にな、信じられないほどの手応えがあってな?攻撃を受けても、防具に傷ひとつ付かなかったんだが...」
「ふ、ふーん、リュウすごーい。」
汗がダラダラと流れるのを感じる。
「このくらいは教えてくれてもいいだろう?秘密は誰にも言わないし、誰にもこの装備は渡さない。」
「え、えーと、それはその...」
「その?」
「だから、その...その...。」
「それくらいは信頼してくれてもいいだろう?」
売る気は一切ないということを念押ししたうえで、私はリュウに、鉄を発掘し、加工できることを話したのだった。
「隕石がもたらした奇跡の鉱物......が、山のように...。」
私が加工した大量の鉄インゴットを前に、リュウが頭を抱えている。
「精霊の森には鉄鉱山があるんだよ。」
「鉄鉱山!?」
リュウは「はあああ。」と深いため息をついて、
「わかった、私の胸に一生しまっておく。」
と、約束してくれた。
ベッドのポケットコイルのように、全く使わないつもりはないのだ。
だが鉄製武器が世に出回れば、戦争なんてひどいことも起こってしまう可能性もあるのだ。
この間の王都では、冒険者は武器を2、3個持ち歩いてると、ギルドで聞いていた。そのくらい壊れやすいのだ。
青銅武器を一度鉄製の短剣で突いてみたが、あっという間にヒビが入って折れてしまった。
つまりそのくらい危険なものなのだ。私には戦争を起こして儲かりたいという思いはなかった。
「難しい顔をしているな?」
「まあね。」
私は笑顔を作ってみせた。
「まあ、これだけの鉄があれば国を一つ傾けられるだろうな。」
「...やっぱり?」
「だが」
リュウの手が眼前に迫ってくる。
「?」
バチーン!
「ったあああああああ!!ポーションポーション!何するん!?乙女の大事なおでこに!」
「作り笑いなどするからだ。ユカリらしくもない。」
ちぇっお見通しか。
「ようはバレなければいいのだ。ユカリはいつものように面白いものをたくさん作ればいい。こっそりと鉄を使ってな?私はそれを楽しみに見守り、いざユカリが鉄を加工できることがバレたら、ユカリを連れてどこまでも、世界の果てまでも、逃げてみせるさ。」
「ふーん。リュウのキザ!」
私は、くるりと回ってリュウに背を向ける。この顔は、見られたくなかったから。
ありがとう、リュウ。
合計10000PV超えました!!ありがとうございます!
めちゃくちゃびっくりしてます!




