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キツネにつままれているかのようだ。

 なんか厄介ごとの匂いのする青年から必死に逃げていたら、「ユカリ!」と聞き慣れた声がしてホッとして振り返る。あの長身の黒ローブは...


「リュウ〜!」

「ユカリ!探したんだぞ!身体強化まで使って買い物するんじゃない!見失って慌てたぞ!無事でよかった。」 


 正面からぎゅーっと抱きしめられる。


「ごめんなさい......リ、リュウさん、どう、どうどう。」


 公衆の面前でこれは恥ずかしい。たぶん私、顔真っ赤だ。


 あと買い物にテンション上がりすぎて、身体強化使ってる意識なかったマジごめん。


「何もなかったか?大丈夫か?怪我はないか?」


 何もなくはなかった。でもそれだと私が転生者であることから何から全部説明しなきゃいけなくなる。


 転生者であること、それをリュウに話すことに抵抗があるわけではないが、さっきのようなことがきっかけでリュウを巻き込んでしまうこともあるかも知れない。


 優しいリュウは、受け止めてくれるだろうけど、私にはまだ、リュウを巻き込む覚悟を持てなかった。


「うん、怪我はしてない。大丈夫。リュウとはぐれて焦った。」 

「焦ったのはこっちだ。何もなくてよかった。」

「...」

「ユカリ?」

「あ、ごめん、何でもない。...いや、何でもなくない。そろそろ恥ずかしいから離してくれたまえ。」


 リュウは「ああ、すまない。」とスッと離してくれた。


「それで、買い物は全て終わったのか?」

「うん!満足した!」

「そうか、もう日が暮れる。宿を取るか?それとも精霊の森に帰るか?それなら野営の準備はできているか?」

「ちょっと考えてることがあるから、精霊の森に行く。暫く籠る予定。野営の準備も大丈夫...あ、いや、リュウと2人分のテントを買いに行こう。2つ連結してるやつがいいな。」   


 分かれてると隠れて2人でマイホーム使えないもんね。


「な!?その、私はもちろんやぶさかではないのだが......い、いいのか?」

「うん。早く買いにいこー。」

 

 あ、マイホーム、客間はあるけど、改築しなきゃいけないな。リュウの身体おっきいし、寛げる場所が必要だよね。


「...奥手なのか大胆なのかわからん。キツネにつままれているかのような気分だ。」

「リュウー?いくよー?」

「...わかった。今行く。」


 その後、近くの大きい道具屋さんで、野営に必要な2つ連結するテントを購入することにした。


 2つ連結するテント、ある!


「すみませーん、あのテントくださーい。」


「はーい!」と若い女の店員さんの声が奥から聞こえて来る。


「こちらのテントをご希望ですか?」

「はい!お願いします!」

「お二人でお使いになられるのですか?まあ...」

「ごほん、そ、そうだ。」


 リュウ、なぜ赤くなる。実質的には使わない道具なのに。


「失礼しました。通常は同性の冒険者様方が買っていかれることが多いもので。」

「なぜに??」

「え!?」

「え?」

「いいから店員、そ、それを貰おう。」


 店員は、テント袋に収納すると、リュウの方にそれを渡す。まあ普通の買い物は重い物は男の人の方に渡すか。リュウ力持ちそうだし。


「お二人とても仲がいいのですね。2つ続きになっている部分には一応鍵もかけられますからね、一応ですが。」


 と、店員のお姉さんはにこにこしていた。


 リュウは何やらブツブツと言っていた。


 そっか、鍵か。リュウの部屋は今は客間の予定だけど、改築したら、部屋に内鍵を付けてあげようかな。安心するよね。

 

「それとこちら、私からのプレゼントです。」


 と、今度は小さなお香のようなものなのに、またもやリュウに渡して、何かこっそり耳打ちしていた。


 そんな小さな物なら、私だって収納魔法使わなくても持てるのに...。


「消音の魔道具です、お二人のような方々に人気なんですよ、理由はおわかりですね?」


 リュウの顔が赤くなる。


「どうしたの?」

「な、なんでもない。店員、また来る。」

「はい、お待ちしております。」

「店員のお姉さんありがとう〜。」


 店員さんはにこにこと手を振ってくれた。


 店を後にして、転移のために、人目につかない路地に入って、来た時と同じ体勢になるようにお願いする。


「転移。」


 私たちは、精霊の森に転移した。






「着いたよー。」

「何度見てもすごいな空間魔法は。泉の前まであっという間ではないか。」


 泉じゃなくて養殖池なんだけどな。今は魚がいないから泉といえるかもしれないが。ここも改造しなくては。


 泉の水を掬うリュウの手からは、もうジュウという音はしない、痛みもないだろう。...よかった。


「ではでは!今は私たち2人以外誰もいないので!」

「う、うむ。」

「リュウをマイホームにご招待しまーす!」

「わかっ...野営の準備は?あのテント......使わないのか?マイホーム?」


 リュウは明らかに肩を落としていた。いやなんでだよ。


「あのテントは人目がある時だけつかうんだよ。テントにいるフリだけして、空間魔法で作られた亜空間、マイホームにいくの!そしてマイホームが私たちの拠点です!」

「マイ...ホーム?」


 リュウは混乱してるのか、首を傾げている。


「百聞は一見にしかず!マイホーム!」


 亜空間への入り口が開く。


「さ、リュウ。入ろー。大丈夫、怖くない、怖くない。」

「怖いとかではなく、どっちかというとガッカリ感が勝るというか...」

「変なこと言ってないで!こっちだよー!」


 私はリュウの手を引いて、マイホームへと招き入れた。


「な!なんだこれは!」

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