王都でのお買い物
超絶イケメンになったことは予想外だったけど、呪いも解けたし怪我も治ったし、概ねよしとする。
「じゃあ私は王都に買い物に行ってくるから。ここで待ってて。安全だから。食べ物も置いて行くね。」
「私も行く。」
「だーめーでーすー、自分が美形で目立つことを自覚してくださーい。」
「だめだ、何があるかわからない、絶対に行く。」
リュウさんや、過保護すぎやしないかな。
火山やら雪山やら行くならわかるけど、ちょいと王都にお買い物に行くだけやで。
「大丈夫だよ、これでも結構強いんだよ。」
「空間魔法の使い手だからな、わかっている。」
「じゃあなんで...」
「私の意地みたいなものだ。」
リュウは、絶対譲らない、と、じっとこちらを見てくる。
イケメン禁止イケメン禁止イケメン禁止。
「ごほんごほん!...仕方ないなあ。そのイケメン顔とご立派な肉体美を隠すものを第一に買いに行くからね。」
「わかった。」
「じゃあ、後ろ向いて。手だけよこして。」
「そちらを向いてはだめなのか?」
「だめです。イケメンは時に目に毒なのです。」
リュウは「仕方ないな」と後ろ向きになって手を出してくる。
じゃあ、ウェアウルフの時の商人さんの店の裏当たりに転移しようかな。
他に商店を知らぬのだよ。
「転移。」
「よし、到着。」
「もういいか?」
リュウがこの至近距離でこちらを向こうとしてきた。
「無理!まだ!」
「いい加減慣れてもよくはないか?これから一生共にいるというのに。」
「リュウに好きな人ができる、もしくは領土に帰りたいってなるまでの間!」
「ユカリ以外に尽くしたい相手など思いつかないのだが?」
「奴隷契約してた影響ですね、早く忘れましょう。」
リュウは何か呟いていたようだが、私には聞こえなかった。
「ごめんくださーい。」
「はいよ、いらっしゃい。...なにやってんだあんたら。」
あ、変な体勢で入店しちゃった。
「リュウ、私はもうあっちを向いてるから、振り向いていいよ。」
繋いでた手も離してリュウにそう促すと、商人さんがリュウを正面からみて「うおっ!」と声を上げる。
「どこぞの国の王子様かと思ったよ。えらい美形のお兄さんだねえ。」
「そうでしょう!?これを隠すローブか何かが欲しいのですよ商人さん!」
「あれ?ウェアウルフの群れから助けてくれたお嬢さんじゃないか!無事王都に入れてたんだな。よかったよかった。」
「あの時はありがとうございました。」
「ははっ!それはこちらのセリフだ、ちょっと待っててくれな。ローブローブ...」
商人さんは裏に行くと、大きい黒の全身ローブと小さい赤の半身くらいのローブを机の上に乗せた。
「この大きいのがお兄さんのだよ。お兄さんは長身だから少し丈が足りねえかも知れねえから、今は間に合わせってことで。今後どっかに作ってもらうといい。」
それは私が作りましょう!楽しみ!
「こっちの、赤いのは?」
「お嬢さん用だ。」
「私の?なんでですか?」
商人さんはキョトン顔で、「だって、なあ?」とリュウに同意を求める。
リュウは真剣な声で語り始めた。
「精霊の存在は、ユカリがいた国ではあまり信じられてないのかも知れないが、この国や周辺国には数々の伝承があり、御伽話として子どもたちにも語り継がれている。」
で?それが何か私と関係があるのかな?
「...美しい黒い髪に、漆黒の瞳の精霊が、ほとんどの御伽話に登場する。いわばユカリは精霊そのもの、もしくは精霊に祝福された者だと、周囲の目には映るだろうな。」
私は今までの全てのことに合点がいった。そして迷わず黒いローブとともに赤いローブも購入した。
「さあて、念願のお買い物へゴー!」
諸々のハプニングはあったが、こういう時は全て忘れてお買い物しまくるに限る!
まず服屋さんに行って、布と糸を大量に購入した。針や鋏は彫金スキルと鍛治スキルで作成済みなので問題ない。なんなら足踏み式のミシンだって錬金で作ってある。
たまたまシルクを見つけたので、製作方法をきいたところ、カイコドーンという大人しい魔物にご飯を与えると美しい糸を吐き出すのでそれを元に作っているらしい。
内緒よ?と生息地まで教えてもらった。
早くうちにもお蚕様をお迎えせねばならんな!
鍛冶屋は殆どが青銅製だった。あとはすっごい高い金や銀の装備で、やはりアダマンタイトどころか鉄がない。
荒稼ぎのチャンスかも知れないが、戦争に使われる可能性もある。他の鉄の使い方を考えようと思う。
栽培に使う種や芋や株分された色々や、果樹の木などは根こそぎ、本当に各店舗全部回って根こそぎ買った。マイホーム充実間違いなしである!
彫金に使う金銀や宝石類は高すぎて諦めた。今のところ鉄や魔石でも彫金スキルは上げられるし、いつか自分で掘ってやる。それで今度こそ荒稼ぎだ!
料理に使う材料や調味料も山ほど買って、調合に必要で、持ってない薬草や素材もたくさん買えた。
大変充実した時間を過ごして満足したのだが...
「リュウ...どこお?」
夢中になりすぎてリュウを何処かに置いてきてしまったらしい。
心配してるだろうな、というよりは、後でめっちゃ怒られそうで怖い。
「リュウー?リュウー?どこー?ごめーん」
呼びながら、キョロキョロと周りを見回していると、
ドンッ
「きゃっ!」
盛大にぶつかって、転んでしまった。
ローブのフードが、ずれて落ちてしまったので、慌てて直す。
「ご、ごめんなさい。余所見をしてて。」
「大丈夫ですよ、立てますか?」
と、日本語で聞かれた。
「はい、大丈夫です。自分で立てますので。」
私はスクッと立ち上がって埃を払う。
ん?日本語??
「あなたも、召喚者ですか?」
よく見ると、黒髪黒目の明らかに日本の制服を着た青年がにこりと笑っていた。
こいつぁ厄介ごとの匂いがするぜ。
こういうときはあれだ。そう。
日本語、ワカリマセーン。
私は、首を傾げると、こちらの言葉で「ごめんなさい、何を言ってるのかわからないです。」と、告げ、その場をダッシュで逃げ出した。
「ふーん...」
青年は、不敵な笑みを浮かべ、ユカリの走り去る姿を見つめていた。




