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旅立ち

「精霊様は天に帰られたのだ!」

「恩をお返しするどころか、お礼を言うことすらできなかったではないか...。」

「お母さん、ユカリお姉ちゃんに、もう会えないの...?俺、まだちゃんとありがとうって言ってないのに。」

「ポルカ...あの方は、ちゃんとポルカの気持ちをわかってくださるわ。」

「ユカリ様...天から舞い降り、数々の御技を起こしてくださり...本当に雷のように瞬く間に、天に帰られたのですじゃ...ありがとうございましたですじゃ。」


 ...入りずらーい


 なにこのお通夜みたいな空気。


 あとまだ精霊様説が消えてなかったんですけども!


 バジャン!と泉に魚を入れると、その音に村人全員が、はっと注目する。


「えー、ごほん。何か勘違いをされてる方がいらっしゃるようですが、これは空間魔法の一つで転移と「精霊様がお戻りになったぞーー!」」


 聞こうよ。


「ですから私は精霊様ではなく、この魔法も転移と言いまし「恩を返すどころかお礼のひとつも言わせて下さらず、どこへ行ってしまわれたのかと!」」


 いやだから聞こうよ、あとそれさっき聞いたよ。


「お礼とか恩を返すとか気にしないでください好きでやってるんで。それでさっきの魔法は転移という空間魔法で私は精霊様じゃな「ユカリお姉ちゃーーーん!いきなり消えちゃうから!俺!ちゃんとお礼言えてなくて!魚美味しかったし、畑と井戸とお母さんと、あとそれから全部ありがとうございました!」


 ポルカ落ち着け。


「ポルカ落ち着け。」


 あ、声に出てしまった。ポルカがぎゅーっと逃がさないとでもいうかのようにしがみついてくる。


「わかったよ、何も言わないでいなくなったりしないから。あと皆さん、さっきのは転移っていう魔法で私は精霊様じゃないですからね?恩を返すとかも本当に気にしないでください」


 不意に後ろからポンと肩を叩かれる。


「全部、わかってますじゃ...ユカリ様。」


 本当かなあ!?村長さんの視線あったけえなあ!?


 その後私は、転移の実演をして見せて、魔法だからと説得した後、セイントサーモンは1匹を残せば、リポップするから永遠に食べられる、だけど、精霊の森のはスキルレベルの高い浄化クリーンが必要だから、川で捕っては食べないように、など説明した。


 




「ユカリ様、本当に色々ありがとうございましたですじゃ。これでこの村も蘇りましょうぞ。この村を代表して心から感謝いたしますじゃ。」

「そんなにかしこまらずともいいですよ。次この村に来た時には、きっと麦が実って、畑にも作物がたくさん見られるでしょうから、それを楽しみにしています。」

「やはり精霊の森に戻られますのか?」


 やはりってなんやねん、やはりって。


「何度でも言いますけど、私は精霊様ではありませんので、できれば大きな街に行ってみたいと思っています。徒歩で行けるようなところで、どこかご存知ですか?」


 村長さんは「ふむ...」とうなって、北を指差した。


「ここから北の方に行きますと、大きな街というか、王都がありますじゃ。冒険者ギルドもありますし、スズナ草のような、精霊の森で採れたものもそこで買取してくれるでしょう。ある程度まとまったお金が手に入ると思いますですじゃ。」

「そうですか、ではそこにいってみようと思います。ありがとうございます。」


 村長さんは皮袋と木の板のようなものを取り出すと、手渡してきた。


「ユカリ様は精霊様ですから...ではなく、今手持ちの路銀がないでしょうから、ほんの少しのお礼ではございますが、こちらをお持ちください。それと、身分証もないでしょうから、私からの紹介状です。王都に入る通行許可証の代わりにもなります。どこかのギルドで身分証を発行されるまでは、それがお役に立つでしょう。」

「うわ!すっごく助かります!ありがとうございます!」


 村長さんはニコニコと笑っている。


「やはり...お持ちではなかったのですじゃ?」

「あ、いや、ええっと...」

「ほっほっ、わかってますじゃ。わかってますじゃ。...ユカリ様、その代わりと言ってはなんですが、お願いがありますのじゃ。」

「あ、はい。なんでしょうか。」

「今回のような飢饉に陥った時に限った時のみ、精霊の森での採取や狩猟を許してほしいのですじゃ。」

「それは私が許可することではないですし、もちろんいつでも入って良いと思いますよ。精霊様の怒りなんてありません。」


 村長さんはペコリと頭を下げる。


「ありがとうございますですじゃ。他の村のものが荒らさないように、しっかりと森を守って行きますじゃ。」

「あ、それはぜひお願いします。」


 なんか3ヶ月もいたからか、そこで生まれたからか、故郷って感じがして、荒らされるのは、すごく気分が悪い。ありがたい申し出だった。


「それじゃ、そろそろ行きますね。皆さん、ポルカ、お元気で。」

「ユカリお姉ちゃんも...。」

「うん、ありがとうポルカ。」


 村の北の門を出て、見送ってくれた村の人たちみんなに手を振る。


「みなさん、お元気で!」


 村の人たちが、段々と小さくなっていく。


「みんないいか?せーの!」


 ん?


「「「精霊様!バンザーイ!精霊様!ありがとうございましたー!精霊様!バンザーイ!」」」


 おい。


 こうして私は、精霊の森と、村を旅立ったのだった。

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