第九話 Let It Go
はっ!意識反応有!意識反応有!
検体番号169327聞こえますか?
検体番号169327返事して下さい?
う・・・。ここは何処なんだ?
ヘンリー博士、か!彼が目を覚ましました!
ここは銀河系外惑星圏生体研究所内。
かつて四体の巨大生物と言う名の使者が地球から人間を終わらせる為にやった来た。
語り継がれる事になる終わりの一週間が始まった。
第一の日、人と生物が姿を消す。
第二の日、世界から全ての生き物が消える。
第三の日、全ての光が無くなる。
第四の日、全ての地面は海に沈む。
第五の日、水も空も消える。
第六の日、闇と混沌の世界が交わる。
第七の日、災は仕事を終え、安息の地へ喜び戻る。
これを持って世界は終わりを迎えた。
一部を除いては。
巨大生物が出現し、第一の日を迎えた松が峰教会。
ひたすらに祈りを捧げる信徒達。
絶望から来る泣き声以外は他に音を出すものは居なかった。
どれだけの時間祈ったのだろうか。どれだけの時間、神に対して向き合ったのだろうか。
真夜中の漆黒に包まれていた教会の中が真っ白な明るさになる程の閃光が信徒達を温かく包んだ。
少し閃光が光を弱めたと感じた頃、響めきが起きた。祭壇に男が立っていたからである。
男は真っ直ぐ前を見ながら、信徒達に語った。
あなた達は明日が来る前にこの街から逃げなさい、災いはすぐそこまで来ている。だが安心しなさい私について来なさい。貴方達は私の兄弟姉妹だからである。
男は片手を天に向かって上げると、再び眩い光が辺りを包み、別の男が現れた。
男は後から来た男に向かって言った。
冥界の王のハーデスよこの方達を安全な場所へ移動させなさい。
ハーデスは言った。
私は有給休暇も中々消化出来ない中、今日は無理を言ってここに来ているのに、全く本当に冥界の王をなんだと思ってるんですかね!
こないだなんか、休み取れなくてごめんねって言ったらすぐに転職って冥界なんだと思ってるんですかね?
ハーデスはイライラしつつ、信徒達を安全な場所へ移動させる為、右手を強く握り目を瞑るとハーデスの身長の倍はある槍が右手の中から出現した。
ハーデスは勢い良く槍を教会の床に向かって、投げつけた。
一瞬、何が起きたのか分からなかった。信徒達はそよ風吹く、草原に立ち尽くしていた。
そこが北極圏だった事はまだまだ先の話だった。
時は流れ、そして銀河系外惑星圏生体研究所内。
検体番号169327こと、TKM君長い長い眠りからやっとお目覚めしたのか。おはよう。
僕はどれだけ寝ていたのですか?
凄く長いとしか今は言えない。残念な事だが、もう他に生きている人達は居ないのだ。君は冷凍保存されていたのだ。
TKMは絶望し、絶句した。
ヘンリー博士は静かに語った。
君にはやらなければならない事があるのだ。
付き合ってもらうよ。
TKMは寝落ちした際、スマホを手から落としてしまった。その反動で目が覚めてしまった。
時刻は深夜3時を過ぎていた。
すると二階の窓からコンコンと叩く音が聞こえた。
TKM!TKM!起きろ!TKMはハッとした。
二階の窓を開けると、水色の車がどういう原理か空を飛びながら、窓際に横付けしていた。
車の中から声を掛けていたのは、KAZだった。
おい、早くしろ他の人に見つかったらまずいから、急げ急げ!後、ネクタイ持ってけよ!
TKMは訳も分からず、パジャマのままネクタイ片手に車に乗り込んだ。
ピピピピピピピピピピピピピピピピ!!!!
ハッ!どうやら二度寝してしまったらしい。
今日は教区の青年達が運営している召命委員主催の企画、イエスの食卓の日の前乗り日だった。
さいたま教区は色んな国籍の神父様がいるので教会訪問を行いつつ、神父様の故郷の料理を習いつつ、みんなでワイワイ食事しようというものだった。今まで手巻き寿司、韓国料理、インド料理を頂いて今回はティラミスとカルボナーラを頂くという事になっていた。
遠路遥々、宇都宮から埼玉県の川口教会へ赴き青年達と神父様と談笑し、酒を飲み交わし各々寝袋を広げ、夢の中へと入っていった。
次の日の朝から昼食に間に合うように食事の準備を進めていき、エスプレッソコーヒーが強く香るティラミスと胡椒の効いたカルボナーラがここに完成したのだった。
食事を終え、青年のみでミサに預かるのだがこれが最高に眠い時がある。
神父様に悟られないように、眠気と戦いながら、ミサ後終わりそうで終わらないし、そろそろ終わりかなとか思っても、全く終わらないシスターとの会話を楽しんだ後、青年達は解散したのだった。