第六話 グリムグリニングゴースト
花火っていうのはさ、小さな命の芽が大空に向かって勢いよく飛び出していき、小さく煌めく星々の暗闇の中に炎色反応によって様々な発色で可憐に大輪の花を大空に描き、それを追いかける様に轟音が鳴り響くけども青年会も同じだと思うんだよね。
最初は自分一人だけだと思い、一人でがむしゃらに遠くの方で静かに輝く他教区の青年会を目指して走っててさ、段々と人数が集まっていき、ちょっとしたイベントで花火の様に盛り上がってさ。その後の轟音の様に大きな達成感が全身を駆け巡り凄く嬉しかったのを今でも思い出すんだよね。
Midoriは花火を眺めながら、様々な想いを胸に静かに呟くように話していた。
足利教会栃木県青年会が大失敗に終わった夜は、足利花火大会当日でもあった。
露店が両脇に所狭しと並び街灯が無いにも関わらず、発電機が夜の蝉のように鳴きながらオレンジ色の光を発光し、花火を見上げる浴衣姿の人々の足元を照らしていたのだった。
青年会の四人は浴衣の大きな河に流され彷徨いながら足を止めては露店で買い物したり、天高く突き上がる花火に歓声を挙げたりした後、人気の無い駐車場に車を停めてエンジンを掛けエアコンの効いた車内で四人静かに花火を見入っていた。
車の窓ガラスの端から打ち上がった花火は丁度、窓ガラスの真ん中で大輪を咲かせ続けるのであった。車内の暗い中で食べるたこ焼きやチョコバナナは嘘だと思うくらい美味しくなかった。
花火大会終了の三十分前に自分達は足利を後にする事にした。
早めに動いたつもりだったのだが、紅く輝く車列に自分達も加わる事になり、ノロノロと花火を眺めながらMidoriはハンドルの上部を両手で握り顎を置き、疲れからくる深い溜息を吐くのであった。
車の速度が段々スピードが上がっていく程、車の周りには漆黒の中に静かに佇む光るオレンジ色の街灯だけとなり、人は誰も歩いては居なかった。
宇都宮に着く頃には時計の短針はてっぺんを指そうとしていた。
松が峰教会の門を四人でこじ開けた頃には日付は変わっていた。
軽い挨拶を交わし車に乗り込み、エンジンをかけラジオを付けるとMISIAの最後の夜汽車が流れていた。
それぞれ青年達は明日に備えてアクセルを踏むのだった。