6/囮と虚無感
コレがないと頭が動かないその3。
睡眠とモチベ。
眠いから睡眠って答えもあるけれど、
睡眠とらないと気分も悪いのも事実で……
よし、書くぞーってモチベも保てれば
なんとかなります(苦笑)
●握手会の会場/会場ホール
結果、飯嶋ソエギは握手会に参加した。
理由は明白。
彼女を護衛しに現れた、人工知能と名乗る存在の助言あってである。
なぜ信じてしまったのか、それが不思議で他ならない。
少しばかり、というより大いに胡散臭さが漂う。
『安心してください。私は貴方を守るために創造されました』
その言葉がやけに印象的だった。
誰が、この人工知能という存在を送り付けたか、わからない。
だが、自分を応援してくれている人も陰ながらいるのだと、そう解釈した。
その結果。
自信ありげな静かな言動も手伝って、自然と頷いてた。
「ありがとうございます! これからも応援お願いしますね!」
と、鼻の下が伸び切った中年男性と握手をする。
今さらながら、実際にファンと触れ合っていくと気分が晴れていく。
「こんにちは。あ、いつもライブに来てくれているカップルさんですよね! 今日もありがとうございますッ!」
この中の誰かが、ストーカーの実行犯。
予告通り、ソエギに何かしてくるかもしれない。
内心まだ萎縮しているが、ファンの前ではそんな姿を見せたくない。
ソエギなりのプロ根性だ。
「ソエギちゃん、応援してるからね!」
「次の新作CDも買うからよろしく!」
明るい男女が続けて去っていくと、並んでいた客が近づいてくる。
次は若い男性。
無理やり頬を吊り上げ、満面の笑みで迎える。
やはり改めて観察してみると、会場には男性客が多い。
大半が個別で来ているようだ。
この中にストーカーがいると思うと、内心、怖い。
『安心してください。私は貴方を守るために創造されました』
携帯に潜んだ、人工知能の言葉を反芻する。
もうサイは投げられたのだ。
あとはこの人工知能の言葉を信じるしかない。
×××× ×××× ××××
「次の方、どうぞー」
皆、汗ばんだり冷たかったり、思いのほか大きかったり。
手の感触は、人それぞれだ。
当然、握手をする直前には両手の確認を怠らない。
荷物検査をして、順番を待つ。
自分の番になれば、改めて両手の確認。
そして空の手を差し出され、笑顔でその手を握るだけ。
たったそれだけの事。
たった数秒だけの出来事。
「次の方、どう――おわッ!?」
――しかし、次の男の番だけはとても長く感じた。
業務員を押しのけて飛び出す、男性。
口元の八重歯が光る。
終始、張り付いた笑顔に背筋が凍る。
「なんだお前はッ!?」
「取り押さえろ!」
伸ばされた手がソエギに届く事はなかった。
横で備えていた警備員が止めに入る。
取り押さえられても、暴れる男。
彼が、件のストーカーなのだろうか。
年齢にして30歳くらい。
どこにでもいそうな、大人しい風貌だ。
乱暴な言葉も飛び出るが、それほどではない。
終始、張り付いた笑顔のまま。
終始、緩み切った目をソエギに向けたまま。
男は数人の警備員に連れられ、その場を後にした。
読了、ありがとうございます。
頭の先から、つま先までコメディタッチを心がけましたが……
脱線多く卑猥あり、シリアスありでお届けしていきます。
生暖かく見守っていてください。