4/飯嶋ソエギの悩み
コレがないと頭が動かないその1。
名前のごとく、コーヒー必須。
缶でも、パックでも、焙煎でも。
特に深夜に書く事が多いので……(眠)
●テレビ局/バラエティの撮影現場
「はい、お疲れっした~!」
飄々とした声を皮切りに、観衆の声が沸いてくる。
今はファンサービスする気分ではない。
だが、それはそれ。
プロたる者、さらなるプロを目指す者としての矜持がある。
ゲスト席を離れ、控室へ戻る際。
飯嶋ソエギは観客席に軽く手を振る。
それを猛烈な両手の振りで答える、女性客2人。
「ソエギちゃ~んっ!」
「次のライブもがんばってねッ!!」
ソエギが属する”レモンスカッシュ”は、男女比にあまり差はない。
男性ファンも多いが、若い女性からも根強い人気が伺える。
ソエギ、小さく微笑む。
表情はそのまま、早足で控室へ戻った。
●テレビ局/控室
「ああ、もう無理。無理。やっぱり無理ッ!」
ソエギ、控室に入るや否や、ソファに身体を預ける。
衣装がシワになろうと知った事か。
ついでだからと、セットした髪をかきむしる。
誰もいないのだから、変に気構える必要はないのだ。
むしろこのまま誰とも話したくない。
誰かと接せずに暮らして生きたい。
「あぁ~それこそ無理だよねぇ~」
「ソエギ、お疲れ様。入るわよ」
と、マネージャーの女性が入ってくる。
ソエギの乱雑な容姿に、目を丸くするがすぐに落ち着いた表情になる。
「もうっ疲れているのは重々承知してるけど、気を抜きすぎよ。ほらさっさと着替えて。次は渋谷で握手会よ」
「渋谷ぁ~? 面倒。面倒。面倒だって……もう仕事したくない」
と、首だけを動かし、マネージャーを見る。
「アホな事いわないの。今日は握手会で終わりだから、ね?」
「…………」
「移動の途中で、いつものタピオカ屋さんに寄ってあげるから、ね?」
「…………わかった。準備する」
いい子ね、と女性マネージャー。
実際、口角が上がってはいるが、心の中では頭を抱えていた。
最近、悪質なストーカーに悩まされているからだ。
やっと人気を博してきた”レモンスカッシュ”。
――それも飯嶋ソエギだけを狙いすましたかのような迷惑行為。
彼女が絡むイベントにことごとく介入してくるのだ。
特筆すべきは、その粘着質なプレゼント行為だ。
そのストーカーは1日1回、ソエギにプレゼントを送ってくる。
必ずだ、1日も欠かした事はない。
舞台裏、撮影現場、事務所、自宅など。
まるでソエギのスケジュールを知っているかのように、狙いすましてプレゼントが送られてくるのだ。
『今日も衣装が映えるね。放送日楽しみにしてるよ』
『今日のライブかっこよかったよ。やっぱり君が”レモンスカッシュ”を引っ張っていかなきゃね』
『昨日の撮影は根詰めてたみたいだから、今日はゆっくり休んでね』
こうしたメッセージカードも添えられてくる。
どこかで見られている。
自分が知らない、誰かがずっと自分を監視している。
――いつしか、そう思うようになった。
ソエギは仕事の出演に対して嫌悪感を抱くようになってしまった。
「さ、次の現場にはあと30分で発つわよ」
今日はストーカーからのプレゼントは、まだ、届いていない。
その不気味さがぬぐい切る方法を知る由もなかった。
読了、ありがとうございます。
頭の先から、つま先までコメディタッチを心がけましたが……
脱線多く卑猥あり、シリアスありでお届けしていきます。
生暖かく見守っていてください。