表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

1.V3の世界 (プロローグ)


 突然だが、『V3(ブイスリー)』というゲームを知っているだろうか。



 一年前の七月、新たにリリースされたVRMMO(仮想現実大規模多人数オンライン)のひとつである。


 インターネットの中に別の世界を構築し、実際にそこで過ごしているかのようになれる場所、それがVRMMOというジャンル。そのジャンルに『V3(ブイスリー)』がある。正式には『Viva Variant Virtualife(ビバ バリアント バーチャライフ)』という。Vが三つ並ぶことから『V3』と呼ばれる。



 難しくなったので要約しよう。


 「VRMMOは仮想世界へ自分の意識ごと旅立てるもの。そのひとつが『V3』である」


 ということだ。


 

 もちろん、このVRMMOを利用したゲームは少なくない。「ディープワールド・オンライン」と言えば、ゲーム好きではなくとも聞いたことがあるだろう。五年前にリリースされ、今やプレイ人口は五億人を越える。世界一有名なゲームである。

 反対に一部の熱狂的なファンのみがプレイする「ゴミゲー・オンライン」なるものも存在する。プレイ人数は一万人に満たない。



 では昨年リリースの『V3』はどうか。


 現在、プレイ人口が一億人で、VRゲームのプレイ人数ではようやくトップテン入りをした。中堅どころのゲームと言える。



 ではなぜV3に注目するのか。ゲーム性や自由度の高さも、AIによるリアルタイム通訳も非常に評判がいいこともある。だが最大の売りは「現実との限りない融合」にある。



 V3の世界で、自宅で買う洗剤や食品、家具家電などの現実生活で使う製品を購入できるのだ。



 V3の制作会社はいくつかの企業と提携をし、V3世界に現実のショッピングサイトをオープンさせた。


 これによりゲーム内のアイテムに課金するのと同じ感覚で日用品を買うことが可能になったのだ。

 V3だけの特別セールなども実施され、他のショッピングサイトより安く買えることもある。購入すればあとは自動宅配サービスが届けてくれる。


 それだけではない。フリーマーケットや医療機関に学習塾、映画館から一部の大学、会社までもがV3の世界に存在している。ログアウトせずとも現実のサービスが受けられる、大学に通える、会社に通勤できる。画期的な世界だ。


 まだまだ提携している企業は少ないが、V3は今後きっと一大ブームを巻き起こすだろう。


 なぜならこれまで述べたように現実との親和性に加え、VRゲームのプレイヤーたちがいるのだから。



 今やVRゲームのトッププレイヤーはプロスポーツ選手と変わらない。


 それぞれのVRゲームが設定するランキングで1位かつゲームクリアすることは、スポーツで世界王者になることと等しい。


 1位でクリアすれば賞金がもらえるだけでなく、スポンサー契約、CM出演、動画配信、web講演、ブログ。影響力も大きくなり、有名人の仲間入りをし、稼ぐ手段も増える。


 1位でなくとも10位以内であれば稼げると言われているようだがが、2位以下ではある程度商売の才能を必要とするようだ。瞬間的に稼ぐことはできてもあくまで一時的。生計を立てるまでには至っていない。

 問答無用に稼ぐにはやはり1位である。とはいえ1位になったとしても、ゲームをクリアしていなければ同じく価値は低い。ランキング算出のイベントは年に数回定期的に行われるため、たまたま1位になった程度では認められにくい。ゆえに、ゲームクリアも求められているわけだ。



「1位、ゲームクリア」

 圧倒的な成功を収めるにはこの二つの条件を満たす必要がある。


 ちなみにV3内でのランキングは『VIVAランキング』という。VIVAランキング1位はV3をプレイする冒険者たちの最終目標のひとつだ。



 あるVRゲームのチャンピオンは言った。

「気付いたら1位になってました。でも課金をしすぎて借金も1億円になってました。ああでも心配ないです。一、二年で返せると思うので」


 別のチャンピオンは語った。

「合コンで今まで相手にされなかったのに、1位になってからはめっちゃモテるようになりました! 次の合コンも楽しみです」


 他にもこんな声がある。

「SNSのフォロワーが十四人だったのに、1位になった翌日には十四万人になってました」


「十億円の高層マンションに引っ越しました」


「彼女が八人できました」


「抜け毛が止まりました」


「音信不通だった元カレから連絡があり、プロポーズされました」


「親戚が増えました」





 まさに一発逆転、一攫千金。


 人生の逆転劇を目指して、今日も多くの冒険者がV3の世界へ旅立っていく。



 なお、V3をクリアした者は未だいない。





 これから、ひとりの女性を追っていく。


 彼女を取り巻く人々も交えながら、彼女を中心にV3の世界を案内する。


 V3で成り上がって生計を立てると決めた女子大学生。果たして彼女はランキング1位になり、ゲームをクリアすることができるのか。


 それを見守ってほしい。



 V3歴二週間、VIVAランキングランク外。


 名は「マリカ」。



【V3基礎知識】

V3世界での外見は、本来の自分とほぼ同じだよ。カプセルの中で自分の姿をコピーするからね。AIの効果でちょっとだけカッコよく&かわいくなってるけど! 思いっきり違った外見にしたかったら、課金すればオッケー! 容姿・スタイル・身長・体重・年齢・性別・髪の毛などすべて思いのまま。髪の色を変えるだけだったら100円でできるよ! レッツトライ! 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ