よろこばせられた くろとの おてがみ
「えっと、」
ゆうなの お手紙を読みました。
ゆうなが わたしのこと かわいいって言ってくれました!
……もう、にやけちゃって、たまんないですね??
えっと、他に なにか 言おうと思ったのだけれど……?
―――ああ、ゆうなが わたしが 来世もし輪廻転生が あって、
また一緒になれたのなら 奇跡が起きたなら、それで
わたしをまた パートナーにしてくれてもいいって
言ってて、それは わたしにとって
けっこうな
驚きでした。
「…うん」
【 綺麗な人生 】ね?
わたしたち、汚れきったドロドロの人生しか歩んでないからね??
(ねえ あなたさん 知ってた??)ゆうなとか 重度のリストカッター
だったから、左腕いっぱい 傷跡がスゴイんだよ……??
リスカと言うより、アムカだよね?
死ねない ゆうなが正気を保つために、
それでも死を身近に感じるために、
いっぱい切ってた。
ガツツツ!!
わたしは ゆうなに夢中で ゆうなが世界の中心で、
……だから ゆうなを求めて犯してたのに、
ゆうなのことは なにも気にしてなかった。
高いところから ゆうなと心中されそうになった
中2の あの晩、わたしの中で 全ては変わった。
―――いまでも ゆうなは、あの夜に
ちゃんと わたしを殺して自分の人生を
終わらせられなかったことを後悔している。
死にたがりの ゆうな。
わたしの大好きな ゆうな♪
ハツっ!
わたしは あの夜に初めて、ゆうなにも ゆうなの肉体にも
重みを持った魂が入っていて 生きていることを知った。
―――それまでは お人形さん……肉人形みたいな感じ
で扱ってたんだよね?? 綺麗で、なんのどんな欲望
にも充分に存分に答えてくれる、オ ニンギョウさん。
あの夜に ゆうなと マンションの階段の
踊り場で、無理心中されそうになった時、
◇ ◇ ◇
トツドド!!
「これ以上 わたしの心が魂が殺されたら、わたしは肉体的に
生きてても、わたしは わたしで居られなくなってしまう!!」
ゆうなは 泣いて 真剣に 切実に切迫して、ゆっくりと わたしを 下は地上が20メートル位の
なにもない空中に押し出していって、……わたしは ゆうなを ちゃんと道連れにしようと、
しっかりと ゆうなの押し出す その手を握って、一緒に死ぬことを狙っていた。
執着した物・ゆうなに殺されるのは、
今まで絶対に反抗しないものと想ってたから、意外だったけれど、
……まあ この世は そんなものかと 不思議に割り切りが出来た。
「別に、他に 心残りも ない
し、好きにすればー??」
本当に わたしは この世に執着がなかった。(地に足が着いて いなかった
とも言う)ゆいいつ この世が 色のある実感のあるものとして感じられる接点が
ゆうなの存在だったから、接点が 自分と わたしの死を望むのなら、
わたしが ゆうなを犯し続けたように それもまた 一つの結論なんだろうと感じた。
ジリリ!
「死ねない、生きたい! いきのこりたい!!
この夜を生きて 乗り切りたい すがさんの
幸せに届きたい……ッ!!!」
「は……?」
接点は、生意気にも わたしを殺す名誉を放棄して、
心中することを日和って、自分で 心がもう限界だと感じてたから
今まで絶対にしなかった一線を越えてきたっていうのに、まだ生きることに執着した。
―――でも、便利だと思っていた 気に入っていた、この世で唯一気に入っていた
存在が、ダレカを ナニカを 思いっきり心の底から想っていることを知って、
「んっ!」
なんだか、それは とってもキラキラしていて
持っていることが想っていることが羨ましくて、
……楽しそうで、
だから ゆうなが スガを想っている気持ちを
真似て、わたしも ゆうなと同じ感情で
ゆうなを想ってみる ことにした。
(……まあ、最初は 全然うまく
出来なかったんだ けれどもね??)
「殺さないの……?
大チャンスだったのに??」
「……わたしは、
奇跡を信じる!」
結局、その夜は 死なないで わたしたちは生き残って、
ゆうなは すがさんに告白して 速攻で 振られて、
今の今まで この夜で 死ねなかった
ことを ゆうなは たっぷり後悔してたりする。
(告白しないで死ねてたら どんなにか良かったって)
―――バカで愚かで、向こう見ずで、
でも とっても勇気ある ゆうな♪
(ちゃんと、わたしを殺せてれば
それはそれで ゆうなは幸せに
なれたんだろうね……?)
◇ ◇ ◇
「なんだ、今日はシ
してこないんだ」
「あ……」
そうしたら、ゆうなの苦しみを地獄を 初めて知って、それから
二度と わたしは ゆうなを犯せなくなった。痛みを知ってしまった。
わたしは 犯していた唯一の武器を失って、
……残ったのはただ ゆうなが世界の中心で
あり続けることと、ゆうなを想って 育て始めた気持ち。
ゆうなは、かわいい。
けれど、狂犬であって
わたしに噛み付いてくる。
ちゃんと わたしに この時から
時間を掛けて 復讐を仕掛けてくる。
―――はじめは ふたりとも人生の
袋小路の 状況に混乱したけれど、
この世の地獄では、同じ境遇に居るのは
互いだけだという認識だけは持っていた。
ジャアアアアアアアア!!
周りの大人は全員 敵で、
正気でこの世を生き残るためには、
互いを上手く利用して助け合わなくちゃいけない。
「あなたのことは 心底キライだけれど、
今だけは 協力し合おう……??」
「ん!
(なんで生きることに積極的に なってるんだろ? この接点。
死んだら全てを終わらせられるって 信じ切ってたクセに…??)」
ゆうなは わたしにムリヤリされ続けて深く深く
傷ついていたけれど、それでも これは
別の問題だと考えたみたいだった。
ワアアアアアアア
アアアアアア!!!
この日も変わらず地獄だったの だけれど
自分たちの家が虐待家庭だと初めて知ったのは、
家を出て 社会に出て 何年も経ってからだった。
それまでは 虐待が普通で 周りの友達やクラスメイトは
それでも 普通を装えて 人間関係や成績とか趣味で結果を出せる
超人で、わたしたちが無能で すぐに死にたくなってしまう、
根性もなくて弱い存在なのだと信じていた。
―――じっさいは、【 普通の人 】は子供の時や 学生時代に
毎日 ラクになるために死ぬことを考えるなんて
ことは、一切 金輪際 一度っきりもなくて、
いつも親の顔色を伺って、オビえて息を
潜めて 暮らしていた わたしたちは、
この世の他の誰にも認められなかった
けれど、ほんとうはずっと よかった。
◇ ◇ ◇
「ねえ、なまえっ!」
互いの痛みを知って お互いが違う存在だと はっきりと分かった夜に、
(ゆうなもゆうなで わたしのことを ゆうななりに理解してくれたみたい)
夜に 泣きながら二人で歩いて、わたしたちは 互いに名前をつけあった。
ゆうな と くろと。
ゆうなは、わたしが付けた名前。(かわいい でしょ??☆)
ゆうなが 今生の戸籍名じゃない 本当の魂を現す名前を
欲しがっていた(渇望していた)ので、わたしが付けてあげた♪
……なんとなく 響きが良かったから、
口を心地よく突いて出たから。
「ねえ、わたしも
おまえに つけてあげるっ♪」
逆に わたしは、
ゆうなに 名前を もらった。
「(そんなの役に立つの?)」 って疑問だったんだけれど、
泣き濡れた ゆうなは、どうしても お返しが したかったようだ。
(こやつ こいつ、いつも泣いてんな……??)
「くろ……と!」
どーやら ゆうなの中での わたしの印象は、
暗闇の黒に 一緒にいるイメージだったらしい。
ワル的な 悪いやつって印象も あったのかな??
くろと。夜の月っぽくて気に入っている。
ゆうなは 速攻で名付けてもらってた(あげてた)けど、
ゆうなは わたしの 名前を けっこう悩んでいた。
名前を つけてから、名前をつけたら どう変わるもんでも ないでしょ?
……って、ゆうなが 名前を欲しがった奇行を 訝しんだのだけれど、
実際は その日から ほんとうに人生が変わった。
目の前の あなたも、もし自分の名前が 生き方が 気に入って
いないのなら、本当の自分に なりたいのなら、自分に名前を
付ける(もしくは付けてもらう)ことを おすすめするよ?
―――願いを込めて 名前をつけて、
名前を呼び続けて 呼ばれ続けたなら、
人生が 確実に変わり続けるから。
「えっと、」
生き残る仲間にはなった わたしたちだけれど、
ゆうなは当然 ヒドいことをシた
わたしのことは深く深く憎んでて、
◇ ◇ ◇
「ん!」
……だから、こーやって 頻繁に 言葉を交わす習慣が
出来ているのは、わたしたちが なろう小説を
書き始めたあたりからが 初めてだったり
するんですよ……??
(ほんとうに!)
ここ三年以内、くらいですね?
まあ、それまでも (生き残るために)必要があったら
情報交換とか話し合いは していたのだけれど、
(そうでなきゃ 今ごろ すっごく悲惨な人生か、
合法・脱法的に殺されてたんじゃ ないでしょーか??)
「ねえ……、
ねえ…っ!!」
実家を出て 安定して ひとり(ふたり?)暮らしが できるようになってからは、
必要が なくなったからか、何年も まともに口を利いてくれなくて わたしの
存在は 基本 無いものとして扱われてましたからね……??
(すっごく つらかった!!!)
……でも、ゆうなが いつか 許してくれるのを待つしかなかったんで、
やっぱり ゆうなを想って、いつか ゆうなと いっぱい お話
できること夢見て、わたしは生きてきたんですよ!
ああ、ゆうなの 願い事を叶えられるのは、
【 あたビギ 】の物語世界しか無いのかなあ……?
―――でも、ゆうなと わたしが 生きられる限りは、
この世で ゆうなと わたしは、最高に 幸せに、
もっと しあわせに なりたいんだよ??
目の前の あなたさんの しあわせも
すっごく 願って 祈っています!
(この世界には、わたしたちと あなたの
3人しか、わたしたちは
必要としないからね??)