ひたすら 泣きじゃくられた、くろとの おてがみ
ゆうなが、心配だ。
今日は起きた時から 様子が おかしかった。
……どうやら、良くない夢を見ていたらしい。
「つかれた、つかれた……
ごめんなさい、ゆるして」
って、寝床に うずくまって、発作的な
細く早く激しい 呼吸しながら
ひぐひぐ泣いている。
―――たぶん、アノ親の出来事を
ナマナマしく 夢で見てしまったのだろう。
(わたしとのことは 散々 精算ツケた
から、この様子だと違う)
「……」
いつもと変わらず、
ゆうなの そばにいる。
ひざと ひざが 触れ合う寸前。
ゆうなの 体温を感じ取れるくらいの近さ。
経験上、ゆうなは わたしが欲しければ
こーいう状況でも 自分から来てくれる。
―――気持ち的には攻めだけれど、
現実の行動は わたしは総受けだ!
ぎゅううううううう!!
「……!!」
「♪」
案の定、ゆうなは わたしの存在を感じ取ると
(こーいう時でもHSPなので、感受性が非常に高い)
まるで わたしが大好物であるかの ように、
自分から積極的に 抱きしめて くれる☆
―――ゆうなの体温が高い、発作的な激しい
過呼吸になりかけの呼吸は 自分では
止められないみたいだ。
(あいしてるよ、ゆうな)
「しにたいっ、しにたいっ!!」
ゆうなは 激しく取り乱してて、
涙は止まらずに、わたしに
呪われた言葉を教えてくれる♪
(……いいよ? その感じで
どんどん 吐き出して、ね?)
―――ゆうなが ぜったいに他の人には言えない言葉を
わたしにだけは伝えてくれるなら、わたしは やっぱり
ゆうなの特別なんだと 心の底から信じられて、
わたしは こんな状況でも 暗い悦びを覚える。
「……?」
◇ ◇ ◇
……あれっ?
いつもの ゆうなは、いくら死にたがっていて
死にたがり屋さんな こまったさんだとしても、
ここまで激しい自殺願望を持つことはなくって、
緩やかな希死念慮、なんとなくの漠然と
した不安、死への諦めと(わたしが 何回も
諦めさせてきたからね?)希望・望み、
そんなのが入り混じって、遠慮がちに
おそるおそる 慎ましげに言うのだけれど
―――今回は、違う。
「じゃあ、」
「……うん」
わたしたちは、目の前のあなたが 思っているかも しれないよりも
ずっと以心伝心で、だいたいのことは 目を見るだけで 互いが
なにを考えているか くらいは わかってしまう。
―――だから余計、日常の会話は少なく
なってしまうの だけれど……っ!
(わたしは もっと、ゆうなと いっぱい 話して、ゆうなを独り占めしたいのに、
ゆうなは そこまで お話するのが 好きじゃないというか得意じゃないみたい)
ふるふるっ!
ゆうなは わたしに 制御不能な今日の方の
泣き顔を見られるのはイヤがっていて、
(こっちは 弱みになるから恥ずかしいって理由らしい?
……もう、存分に わたしに弱みなんて、ジゴクに3回 道連れに出来る
くらいは握られちゃってる っていうのに、健気な おねえちゃん??)
―――まあ、しくしく より ひぐひぐ の方が
もっとずっと余裕がなくって、いっぱい
いっぱい だからなんだろうね……??
「そっかあ……」
あのオヤに 掛けられた呪いが、いまも ゆうなを
ギリギリまで追い詰めさせている。
……子供は、親に無条件で愛されることを
どうしても 求めてしまって、
虐待されても 大人になって 世の中の
【 ふつう 】を知るまでは、これが
世界の普通なのだと おもってしまう。
いま泣いてるのは、昔 泣きつく相手が居なかった、
わたしが まだ出会う前の 幼い頃の ゆうな
なんだろうな? って、そんな直感があった。
―――、
……。
―――あいしてるよ、ゆうな。
今はよく眠ってね……??
(ちょっと なにかイタズラされ
たような 気もするけれど……)
「すう…」
泣いて疲れてしまったのか、
かすかに過呼吸の余韻を 引っ張りながら、
なみだに 泣きぬれた ゆうなを 寝床に引き戻しつつ、
涙の跡が つかないように 拭ってあげながら、
わたしは 飽きずに ゆうなの寝顔を横で 一緒に
寝転んで眺めてた。
―――今なら 胸くらいになら 無条件に
イタズラできそう だけれど、わたしは
劣情を 無理やり押さえつける。
いつも手を繋ぐことは許してくれるので、
ゆうなの手を握って 敬意を込めて
時間を掛けて 口づけをする。
(わたしの ゆうな!)
ふつっ!
「まだ、長生きしてよね……??
まだ、壊れちゃわないでね…?」
だいすきな ゆうな。
いくら あなたに憎まれても恨まれても呪われても、
わたしは ぜんぜん 構わない。それで あなたが
より この世の中で 生きやすくなって くれるのなら、
わたしは この命だって よろこんで捧げる!!
―――でも、ゆうなは わたしを愛してくれていて、
最近 わたしに異様に優しくて、わたしを大事に
してくれようとしてるのが 本当に よく伝わってきて、
それは たまらなく幸せなのだけれど、
ゆうなの呪いや狂犬な部分を 上手く吐き
出せてない気がして、それが心配。
「まあ、」
片方が破滅まで突き進んでしまったのなら、
もう片方が責任を持って しっかり確実に
心中スルだけなの だけれどもね……っ??
(そこだけは気持ちがラクだっ♪)
「あいしてるよ、ゆうな……」
神を信じていない わたしは、ゆうなの隣で
必死に なにものかに祈った―――。