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夢が
15.大切なモノを壊す
失うのが怖かった。誰かの手によってなくなってしまうくらいなら、自分の手で壊したかった。
「——さよなら」
囁いたその言葉は、その人には届かない。
大切なモノを自ら壊した私はもう、こんな世に未練はない。
「私もすぐ行くからね」
痛みを快楽とともに飲み込んで、私は愛するあの人の元へと旅立った。
16.大切なモノを共有する
「歩いた! ちょ、歩いたよ!」
騒がしい声とともにバタバタと走り寄る声にびくりと肩を震わせる。振り返ってみたが、僕自身はその歩いてる姿を確認できず。
「抱っこしたらわかんないって…」
「確かにぃ」
項垂れる彼女と、キョトンとする赤ん坊にくすりと笑う。
嗚呼、なんて愛おしい日々なのだろう。