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君の
21.生
迫り来るナイフ。背中を襲う鈍痛。襲ってくる女の顔。
全てが恐怖だった。
自身を襲う痛みも、死も。
「いやだッ」
必死で逃げて、逃げて、生きようとして——救いを求め叫んだ瞬間、意識が覚醒した。それまでの出来事が夢だったのだと理解すると共に、自覚した。
嗚呼、私はこんなにも、生きたかったのか。
22.昔の恋
遠い日の記憶を思い出した。
「ほんと昔の私、君に純粋に恋してたわぁ」
本人に話すにはおかしな内容であろうが、ついつい話せてしまうのは、今の私達の関係が色恋沙汰とは程遠いからだろう——と、思っていたのだが。
「今は好きじゃないの?」
どきりと高鳴る鼓動は、私に既視感を与えるには十分だった。