嚆矢濫觴の段 2
手のひらサイズの女の子、名前はクリエイトシステムNo.8という。
俺はこの非常事態下で、この子に見とれていた。
ゆるふわカールのセミロングの黒髪、どこか幼さを感じさせつつ大人っぽい雰囲気のある顔、大き過ぎない胸に小さ過ぎないヒップ。どこをとってもかなりタイプの美少女だ。
「では最初に、世界神様にこの世界で何をして頂くかをご説明させて頂きます。」
声もタイプだ。何もかもタイプだ…!
「ここは惑星・ゼロリアン。まだ何もない星です。環境は地球によく似ているので、世界神様もすぐに慣れると思います。世界神様には、MPを使って、この星を創って頂きます。」
「MP?」
「MPは物、人、動物、モンスターを生産する時に必要なポイントの事です。世界神様は、このポイントを使って、自分の創りたい世界を創って下さい。所持ポイントを超える大がかりなものは創れませんのでご注意下さい。所持ポイントは、日付をまたぐと最大ポイント分を残量ポイントに加えられて回復します。」
「なるほど。何日も待てばそれなりに大がかりなものが創れる訳か。」
「流石は世界神様。ご理解が速いですね。」
「その世界神って呼び名は止めてくれるかな。」
「では、なんとお呼びしましょう?」
「普通に風也で良いよ。」
「かしこまりました。」
俺はずっと言いたかった事を言ってみた。
やっぱり名前か名字で呼ばれる方がしっくりくる。
「では、風也様、レベルについて説明させて頂きます。世界神にはレベルがあり、レベルが上がると創られるものが増えます。レベルを上げるのに必要なLPは、制作を行うと手に入ります。消費したMPがそのままLPとなります。」
なるほど。凄いものを創るにはそれなりのMPがかかる。かといってレベルを上げないと凄いものが創れないからMPを消費する必要があるって訳か。開始早々から何もしないっていうのを防ぐ手立てか。
「続いてレベルアップについてです。レベルが上がると創れるものが増え、最大MPの上限が上がります。他にも、レベルが上がった時にMPが最大まで回復します。この時、残量MPはなくなりますので、タイミングの見極めが重要です。」
ほうほう。
「以上で説明を終わります。何か質問はありますか?」
「どうやったら地球に帰れる?」
「レベルが上がると『里帰り』というスキルが使えるようになります。そのスキルを使って、一時的に帰ることができます。」
レベルが上がると…。しかも一時的…。まぁ、地球でやり残した事が全てここでできるから良いんだけど。
「そう言えば、俺が突然皆の前からいなくなって大丈夫なのか?」
「はい。家族の皆様、またご友人様や知り合いの方々の記憶を改竄し、本州で一人暮らしをしている事になっています。」
改竄…。存在ごと消去よりはマシか。
「他には何かありますか?」
「いや、とくに無いよ。」
「かしこまりました。でお困りになったら私をお呼び下さい。」
「なんて呼べば良いんだ?」
「風也様が決めて下さって構いませんよ?」
「じゃあ、クリシス。お前は今日からクリシスだ。」
クリエイトシステムなのでクリシス。なんと単純。
「そ、そんな人の名前のような…!す、少し、恥ずかしいです…。」
感情があるのか機械の癖に。
「よろしくな、クリシス。」
「はい、よろしくお願いします。風也様。」
―――ウィーン、ピピ
機械がシャットダウンし、クリシスが消えた。
こうして、俺のゲームマスター生活が始まった。