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時空守護士タイムアテンダント  1 巫女と女王の願い  作者: 夜湖
第六章 天空の戦い
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舞台は英麻たちが去った後の弥生時代に移る。

この日、例の雨乞いの儀式が行われることになっていた。

夜の闇に包まれた邪馬台国の祭場。そこが儀式がなされる場所だった。松明の明かりに照らし出された祭場には、多くの人々が集まっていた。サダヒコ、長老、巫女頭。兵士や巫女や侍女たち。さらにその周りにはたくさんの村人たちの姿があった。そして―――

祭場に組まれた櫓の上。そこに卑弥呼がいた。

「本当に雨なんか呼べるのかしら」

「もし、これで失敗なんてことになったら、いよいよ田んぼは干上がっちまうぞ」

村人たちは卑弥呼を見やっては口々に囁き合った。日照りによる水不足は続いており、この祭場にも乾燥した空気がこもっているようだった。

「ヒミコ…」

巫女頭は静かに卑弥呼を見守っていた。

櫓の上に座る卑弥呼が祈り始めた。

目を閉じて、青葉のついた枝をゆっくり振っていく。


風の音を聞いて。雲の動きを感じて。

卑弥呼は一心に枝を振った。

母さまはもういない。でも、それで終わりじゃない。

今、ここにある願いを込めて。

祈るのだ。


ひやっとした風が吹いた。

続けて低く何かが轟くような音。

その瞬間、祭場にいた人々はある匂いをかいだ。懐かしい匂い。乾いた大地に水が染み込む匂い。それは雨が降り出す時、地面から立ちのぼってくる匂いだった。あの低く轟く音。あれは雷の音だ―――人々がそう悟った時、彼らの顔にポツリと冷たいものがあたった。

「雨だ」

空から無数の雫が降ってくる。それらは勢いを増し、ザアーッという音が祭場に満ちていった。その音は人々にとって最高の音楽だった。

「雨だっ」

「雨だぞお」

人々は叫び、抱き合い、躍り上がった。

「ヒミコさまのおかげだ。女王の誕生だ!」

「ヒミコ女王、万歳!」

「ばんざあーい!」

兵士も巫女も侍女も村人たちもずぶ濡れだった。だが、それにも構わず彼らは手を取り合い、ひたすら喜び合っていた。

櫓から降りたヒミコにサダヒコたちがかけよった。

「姉さま!姉さま、やった!」

「ヒミコ…ヒミコ女王…よくぞやってくれたのう」

サダヒコは頬を上気させ、長老と巫女頭は泣いていた。

「私は」

卑弥呼は彼ら一人一人の顔を見て、はっきりと言った。

「これからも守るべきもののために力を尽くしたいと思います。邪馬台国の女王として」

雨に濡れたその笑顔には清らかな輝きがあった。サダヒコが卑弥呼をまじまじと見つめた。

「姉さま、どこか変わられましたね。前はもう少し迷いのようなものがあったのに、それが吹っ切れたというか」

「ああ」

サダヒコの言葉に卑弥呼は小さく笑った。

「そうだな。もしかしたら、ちょっと不思議な体験をしたせいかもしれない」

「不思議な体験?」

「もううっすらとしか覚えていないし、おそらく夢だったのだろうが…実は、私にはかつてこの国を見下ろした覚えがあるのだ。空のはるか高い所から。そして、その時に気がついた。この国の大地にはたくさんの民が暮らし、日々を懸命に生きていると。彼らこそ、今、私が守るべきものだと。おかげで心を定めることができた」

サダヒコ、長老、巫女頭は神妙な面持ちで卑弥呼の話を聞いている。

「そういえば、その時、私はとても大きな鳥に乗っていた気がするな」

「何と。そんな巨大な鳥なんて、きっと化け物か何かじゃ。恐ろしいことじゃのう」

長老が年甲斐もなく、怯えた表情になった。卑弥呼は首を横に振った。

「いいえ。少しも怖くはありませんでした。誰かかそばにいて、ずっと私を守ってくれたから」

卑弥呼は目を閉じ、その時の光景に思いをはせた。


夜明けの光が満ちる中。

空色の大きな鳥の背に乗っている自分。隣には同じく空色の衣をまとった少女がいた。花飾りのついたお団子頭が卑弥呼を振り返った。力強い声が聞こえる。

『―――大丈夫だよ。あなたの心は私が守るから』


まだ、雨は降り続いていた。だが、不思議なことに雲間から月が見えた。レモン色の満月だ。遠くに見える円い月に卑弥呼は微笑んだ。

「母さま…ヒミコはこれからも頑張りますね」

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