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「ねえねえ、英麻チャーン。英麻チャンってばあッ」
「英麻ちゃん、大丈夫?さっきからものすごく静かだけど」
操縦席のサノが心配そうに聞いてきた。英麻は先ほどからニコがいくら髪の毛や頬を引っ張っても無反応だったのだ。
「え…ああ、はい。大丈夫です。ハハハ」
綿雲が浮かぶ青一色の空間がびゅんびゅん過ぎ去っていく。進行方向にはクロノロジーランウェイの一本道がはるか遠くまで続いていた。
英麻はシリウス328で201X年まで送ってもらっている途中だった。スピカは今回、パワーを使いすぎたため、帰りの飛行は難しいとのことだった。今はミニチュアサイズになって英麻の膝の上にある。
「ただ、ちょっと考えちゃって。私、卑弥呼になんにもできなかったなあって」
英麻はぼんやりした顔でスピカを撫でた。
「卑弥呼は女王になることであんなに悩んでいたのに。何の助けにもなれなかった」
「相変わらず、おまえの答えは調子っぱずれだな」
ハザマが操縦席から英麻を振り返った。英麻は思わず身構えた。またその口の悪さで喧嘩を売ってくるつもりなのか。
「時の花びらを回収する直前、卑弥呼は言ってたよな。『ありがとう』って。これは理由はどうあれ、何かしら助けられたことがあったから、そう言ったんじゃないのか?他でもないおまえに」
「卑弥呼が私に…?」
「まっ、あくまでも想像だけどな」
それだけ言うとハザマはそっけなく前を向いた。
英麻は少しだけ気持ちが楽になった気がした。




