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時空守護士タイムアテンダント  1 巫女と女王の願い  作者: 夜湖
第六章 天空の戦い
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あの真っ赤な色。ミダスなるメビウスのタイムマシンだ。天井部分が開け放された操縦席に高笑いを上げるイプシロンの姿が見えた。パイとローらしき影も。

「お空に逃げたってムダさあ!どこまでも追いつめて時の花びらを奪ってやる」

「うそっ、何でメビウスがもうここまで来てるの!?」

「たぶん、操られた人たちを盾にしてタイムパトロールの隙を突いたんダヨ。とにかく今は逃げるしかないネ。そおーれ、バリアー発動、加速スイッチオン!」

ニコが今度はオレンジ色のボタンをタッチした。

「わっ…!」

スピカはオレンジ色の膜に包まれ、一気に速度が上がった。メビウスのミダスが後ろに遠ざかっていく。

同時に英麻の胸元が光り出した。首からかけたタイムパスポートの光が点滅している。

「ニコ!タイムパスポートが」

「英麻チャン、それを耳に近づけるんダヨッ」

「こう?あっ、何か聞こえる」

『―――…英麻君、わかるかの?』

聞こえてきたのはのほほんとしたあの声だ。

「オカ司令官!」

『事情はシバ隊長から聞いた。このまま時の花びらを回収しよう。この回収方法の場合、卑弥呼は花びらが体から出た直後にいったん気を失うが、後で再び目を覚ます。心配はいらないよ。英麻君は卑弥呼の時の花びらをつかみ、しっかりタイムゲートにかざすんじゃ。これは英麻君にしかできないこと。そして、英麻君なら必ずできることじゃ!』

「オカ司令官…」

「何、和んでるんだよ、足立!メビウスが攻撃してくるぞ!」

近くにハザマとサノが乗ったシリウス328が見えた。応援に来てくれたのだろう。間髪入れずに赤黒い閃光が飛んできた。スピカに追いついたミダスからの攻撃だ。パイが笑いながら次々とスピカを狙ってくる。

「こーんなバリアー、すぐに壊しちゃうよ!」

シリウス328がスピカとミダスの間に入った。白い光線を放ち、ミダスの閃光をはね返す。

イプシロンが舌打ちした。

「まったく、うっとうしいねえ。ロー、邪魔者は始末しておやり」

「わかった…」

ひときわ激しい閃光がシリウス328を直撃した。

バキッという大きな音。シリウス328はみるみる失速し、見えなくなった。

「サノさん!ハザマ…!」

真っ赤な飛行船がついにスピカの真横に並んだ。赤黒い閃光が獰猛にバリアーを叩いてくる。

バリンと耳障りな音が響いた。スピカのバリアーが割れたのだ。オレンジ色の膜には大きな風穴が空いていた。溶け去るようにバリアーが消えていく。

さらに閃光が撃ち込まれる。

「きゃあっ」

すぐ近くに閃光が当たり、卑弥呼が英麻にしがみついてきた。その体はかすかに震えている。英麻は怯える卑弥呼を抱きしめることしかできなかった。

真っ暗だった空が白み始め、満月も遠くに霞んでいく。もうすぐ夜が明けるのだ。

どうしよう。このままじゃ、また時の花びらが奪われる。

そうなったら卑弥呼は二度と目覚めなくなるのだ。お母さんのことを思って生きてきた卑弥呼の心も失われてしまう。

そんなことさせない。

私がさせない。

英麻は体の中にさあっと風が吹き抜けるのを感じた。

静かに立ち上がる英麻。卑弥呼が英麻を見上げた。

「エマ?」

英麻が卑弥呼を少しだけ振り返った。

「―――大丈夫だよ、卑弥呼。あなたの心は私が守るから」

ひとひらの白い桜の花びらが舞った。

先ほどとはまた違う、誰かの声がした。


あなたならできる。あなたなら守ってあげられる。

目覚めなさい。時空守護士よ―――


英麻は左手のスカイジュエルウォッチを天高くかざした。

空色のスカイジュエルから光があふれ出す。真っ白い雲と薄紅色の花びらが渦巻き、英麻を包み込んだ。雲が晴れた時、そこにはまったく違う英麻の姿があった。

青空を映したようなブルーのジャケットとスカート。足元にはカチッとした黒のタイツとハイヒール。首にはピンクのスカーフとそれを留めるタイムパスポートの花。二つ結びだった髪は金の花飾りと黒いリボンがついたシニヨンとなっていた。

凛とした声で英麻は叫んだ。

「―――時空守護士タイムアテンダント、ここに誕生!」

卑弥呼とニコ、それに何とか無事だったサノとハザマは英麻の姿に目を見張った。ハザマがかすれた声で呟いた。

「あれが変身したタイムアテンダントの姿…」

メビウスの者たちも狐につままれたような顔だった。だが、すぐさまイプシロンがあのボーガンらしき道具を構えて叫ぶ。

「ふん、急ごしらえのタイムアテンダントに何ができる。今度こそ、卑弥呼の時の花びらをいただくよッ!」

黒い光線が卑弥呼に向かってくる。しかし、英麻の方が早かった。さっと卑弥呼の盾となり、再びスカイジュエルウォッチをかざした。右手に何かが現れる。ピンクのハイパーヨーヨーに似た道具だ。英麻は見事にヨーヨーを操り、黒い光線を弾き飛ばしていく。

「ハザマ、援護するぞ」

「了解!」

シリウス328がスピカに伴走しながらメビウスの閃光攻撃を防いでくれた。

卑弥呼はあっけに取られた顔で、戦う英麻を見ていた。だが、何に気がついたのか、シートベルトを外してスピカからそっと身を乗り出した。

眼下には様々なものが見えた。朝日に照らされただいだい色の山の群れ。霧が立ち込める森と川。やがて、卑弥呼の視線は邪馬台国の集落へと移っていく。

「キャッ!卑弥呼、危ないヨ!ホラ、下がって下がって」

ニコが慌てて卑弥呼の袖を引っ張った。

「あ…ああ、すまない。ところでまじない人形、私はこれからどうすればよいのだ?時の花びらとやらを回収するのだろう?」

「それなら大丈夫ダヨ!英麻チャーン、今からタイムゲートを出すから卑弥呼のそばにいてあげてネーッ」

「わかったわ!」

ニコがピンクのボタンを思いっきりタッチした。まばゆい光が一直線に飛び出す。

夜明けを迎えた大空に巨大な光の輪が現れた。

タイムゲートだ。

ミニチュアの模型で見たものよりもはるかに迫力がある。スピカはタイムゲートの中心に向かってまっすぐ進んでいった。ニコが操縦席で様々な操作をしながら叫んだ。

「さあ、いよいよ時の花びらを回収するヨ!」

英麻は卑弥呼の両肩にそっと手を添えた。卑弥呼は騒ぎも怖がりもせず、じっとタイムゲートを見つめている。

これで卑弥呼の中から私の記憶は消えるんだ。

英麻は何とも言えない淋しさを感じた。タイムゲートはもう目の前。その時だった。

「エマ」

卑弥呼が英麻を見た。

「ありがとう」

卑弥呼はにこっと笑った。やはり海夏子に似た、温かい笑顔だった。

スピカがタイムゲートの輪に入っていく。卑弥呼の胸に金色の光が現れた。時の花びらだ。その瞬間、卑弥呼は静かに目を閉じ、後ろ向きに倒れていった。英麻は卑弥呼の体を支え、片手で時の花びらをつかんだ。タイムゲートに向かって花びらを高く掲げてみせる。

金色の光が強まり、時の花びらは一瞬で消え去った。

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