6
再び英麻の家。
妹の百果と二人で使っている子供部屋には今、誰もいない、はずだった。
散らかった英麻の勉強机の上。そこに妙なものがいる。
ピンクの子ブタのぬいぐるみ。
だが、それはどこか変だった。先ほどから机の上を行ったり来たり、自由に動き回っているのだ。まるで生きているかのように。
「変だナ~。もう学校は終わってるはずなのに遅いヨオ…」
小さな子供の声がした。
それと同時に別の声が部屋に響いた。若い男の声。それは子ブタの首輪から聞こえてきた。少し急いだ様子だ。
「―――…ニコ777、ニコ777に緊急連絡あり。タイムアテンダントの足立英麻はすでにファンタジードームに向かっている。理由は不明」
気のせいか、子ブタのピンク色が少し青くなったように見えた。
「このままだと時間移動の指定時刻、午後五時三十分に間に合わない。至急、ファンタジードームに行き、足立英麻を発見せよ。本人がスピカに搭乗後、そのまま移動を開始する。とにかく急ぐように。以上!」
首輪の声はそこで切れた。部屋の時計は午後五時十五分を指していた。
「…大変だア」
子ブタのぬいぐるみはますます青くなった。すぐさま部屋の窓から外に飛び出す。大きく弧を描いてジャンプ。
見事、家の前の通りに着地した。子ブタはポヨンポヨン弾みだすと猛スピードで通りを進んでいった。