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えんじ色の体操着のまま、リュックサックを背負った英麻は学校からの帰り道を急いでいた。
「早く帰って試験範囲をつめ込んで~何とか試験を乗り越えたあかつきには~布施くんたちの『剣聖華劇』が待っている~!ああ、楽しみっ」
鼻歌まじりに走る英麻の行く先に五、六人の少女がおしゃべりしながら歩いてくるのが見えた。皆、英麻と同い年くらい。上品なグリーンの制服を着ている。都内でも有名な偏差値の高い私立の女子中学校、栄生女学院の制服だ。英麻の目が少女の一人に吸い寄せられる。
あそこにいるのは。
突然、英麻は反対方向へと駆け出した。少女たちのグループが遠ざかっていく。彼女たちは英麻の動きには気づかなかったようだ。
英麻はひたすら走り続けた。