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時空守護士タイムアテンダント  1 巫女と女王の願い  作者: 夜湖
第二章 突然のテイクオフ
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「もうっ!何で私だけあんなにしつこくお説教されなきゃなんないのよ。鬼のツノミヤめ」

体育座りでオレンジ色のボールを抱え込む英麻の顔はぶうたれていた。

「そりゃ怒られるでしょ。あれだけよそ見してたら」

隣に座るショートカットの少女、同じクラスの小池純こいけじゅんはあきれ顔である。

この日最後の授業は二限続きの体育で種目はバスケットボール。今、英麻たちのチームは休憩中だ。目の前のコートでは他チームによる熱戦が繰り広げられている。

「あーあ、卑弥呼はいいよねえ」

流れるパスのやり取りを目で追いながら、英麻はぼやいた。

「えっ?」

「ほら、今日の日本史の総復習にも出てきたじゃない。『じゃまたいこく』の女王様の」

「じゃまたいこく?邪馬台国でしょうがっ」

「あれ、そうだっけ」

「ちょっと英麻ー、あんた大丈夫?試験までもうそんなに日にちないよ」

純の言う通りだった。今日で純と英麻が所属するバレー部も含め、クラブ活動はいったん休み。一週間後にはいよいよ第一回定期試験が始まる。が、英麻は聞こえないふりをした。

「きっと生まれた時から何不自由ない、ゴージャスな人生だったんだろうなー。しかも、卑弥呼は魔法まで使えたんだよ、純ちゃん」

「魔法とはちょっと違うんじゃあ…不思議な力は持ってたみたいだけど」

「それにひきかえ、こっちはただの中学生。毎日毎日つまらない勉強の繰り返しよお」

英麻はがっくりうなだれた。

「まあ、そう暗くならないでよ。明るいニュースもあるんだから」

得意げに純が囁いた。

「明るいニュース?」

「ふふん。実はねえ」

内緒話を聞いた英麻の顔がみるみる輝きだす。

「うっそおーッ!ほんとに当たったの?『剣聖華劇』の抽選?」

「そーよ、まさかの四枚ゲット!まあ、席は最後尾なんだけどね」

『剣聖華劇』は若い女の子たちから絶大な支持を受ける舞台である。聖組というこれまた大人気のアイドルグループの少年四人が主要キャストを演じる時代劇風のミュージカル。歌とダンスを交えたスタイリッシュなアクションシーンを売りにしている。チケットの入手はいつも激戦だ。

「夢みたい。あの布施くんの竜胆丸が生で見られるんだあ」

「あら、蘭之助役の翔ちゃんだってかっこいいわよ?聖組きっての盛り上げ役なんだから。ま、そんなわけで当日はまたヘアアレンジよろしくね。理子もあかねも私も英麻のアレンジ、気に入ってるんだから」

「うーん、三人分はちょこっと大変だけど…この足立英麻、期待に応えてみせるわよっ!」

「コラッ、足立に小池!いつまでしゃべってるの。あんたたち、次の試合出番なんだからさっさと準備する!」

体育担当の佐々木先生が厳しい声を飛ばしてきた。

「わっ、いけない」

「すみません。今、行きます!」

英麻と純は慌てて立ち上がり、コートへ走っていった。

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