95/107
小話:其の九拾五《娯楽と暇潰し(仮題)》
【“祝・映像化”な蜜の味――】
《娯楽と暇潰し(仮題)》
ふたりの男が、昼食を食べるために訪れたいきつけの定食屋で、それぞれ注文した品が出てくるのを待っていました。
ひとりの男は、テーブルの上に放置されていたマンガ雑誌をなんとなく手に取り、なんとなく流し読みます。
ひとりの男は、もう手に取るものがなにもなかったので、なんとなく神棚の隣に設置されたテレビを見やることにしました。
「なあ」
「ん?」
「テレビを観ていて、ふと思ったんだけどさ」
「なにを?」
「テレビのニュースで流れる“悲惨な出来事”と、ドラマとか映画の“悲惨な出来事”って、なにが違うんだろうなってさ」
「……どゆこと?」
「だってさ、観てるこっちとしては、どっちも同じ“作られた映像”だろ?」
「んー、まあ確かに、ある意味そうだな」
「じゃあ、その違いは?」
「そんなの、それを観た後に“感動した”って言うか言わないかだろ」