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小話:其の五拾六《どちらなのか(仮題)》

【“人”は、自らの脚で自立しているヒトの】

《どちらなのか(仮題)》


 とある時代の、とある国の、とある街の、とある喫茶店のテラス席に、ふたりの男の姿がありました。コーヒーとミルクティーを、それぞれ味わっています。

「“人”という漢字は、“ヒト”と“ヒト”とが支え合っていることを示しているんだ。あれだよな、支え合いが大切だってことを、昔の“ヒト”は知っていたんだな」

 コーヒーを味わっていた男が、学があることを誇るがごとく得意げに言いました。この男は新しく知ったことを得意げに語りたがる癖があるのです。

「へぇー」

 ミルクティーを味わっていた男は、友人である男の癖のことをよくよく知っていたので、その話が“いまさら”だとはあえて言わず、

「じゃあ、お前は“どっち”なんだ?」

 という問いを、“いまさら”という言葉の代わりに投げました。

 いいことを語ったったとコーヒーを味わっていた男は、

「…………どゆこと?」

 口内に広がる苦味と酸味に眉をしかめるがごとく、眉根を寄せて訊きました。

 男はミルクティーを味わうのをいったん休止し、ふところから手帳を取り出すと、それを開いて付属のボールペンを手にし、そしてまだ予定の書き込まれていないページに“人”という漢字を書きます。

 ――そして。

 右の短いほうに寄りかかっている左の長いほうと、左の長いほうに寄りかかられている右の短いほうを、それぞれ指差して、改めて問います。


「左の長いほうか、右の短いほうか、支え合っていると言うのなら、自分を“どっち”だと思う? “どっち”でありたいと思う? 相手が“どっち”であることを望む?」



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