小話:其の四拾八《れんしゅう(仮題)》
【よしゅう、ふくしゅう、明日の自分のために】
《れんしゅう(仮題)》
ふたりの男の姿が、とあるカフェのテラス席にありました。
ひとりの男が、新聞を手に不満そうな顔をして言いました。
「まったく、おい、見ろよこの発言。ふざけやがって! この野郎、オレたち国民から“表現の自由”を奪っておきながら、子どものためとか、害あって一利なしとかぬかしやがる!」
新聞には、ある“表現の規制”に関する最高責任者の発言が書かれてありました。
「なあ、おい、聞いてんのか? お前だって納得いかないだろ? 頭ん中じゃ、この野郎のこと八つ裂きにしたいくらい気に食わないだろ? 聞いてんのか? なに悟った坊さんみたいに穏やかな顔してやがんだよ」
「いやー、だってさー、その内さー、犯罪行為を“そうぞう”しただけで逮捕されるような世の中になりそうだからさー、いまからどんなに気に食わない野郎がいても八つ裂きにしようなんて“そうぞう”しないよう練習しとこうと思ってさー」
「マジかよ……。お前、スゲェな」
「いやー、まぁー、“表情/おもて”に出さないようにするだけで精一杯なんだけどさ」