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小話:其の四拾《サービス(仮題)》

【さーびす、さーびすぅ~】

《サービス(仮題)》


 とある時代の、とある国の、とある場所の、とある会議室に、会議机を囲むようにして座っている多数の人影がありました。

「では、今後さらなる“顧客”の獲得を目指して売り出す“商品”についてですが――」

 この場において進行役と思われるひとりの中年の男性が、ホワイトボードの前に立ち、手にある書類に目をやりつつ言いました。きっちり七三に分けられた頭に、カッチリしたスーツを着ています。左の手首には、実用性とファッション性を兼ね備えた“いやみのない”ブランド物の腕時計がありました。

「“集団生活”においてしばしば生ずる“諸問題”から“購入者/顧客”を優先的に保護し、問題の優位的な解決に取り組む、“集団生活ニコニコ安心プラン”」

 進行役の中年の男性はホワイトボードに必要事項を書いてから、手にある書類の次のページを開き、

「次に、“購入者/顧客”に対して“優先的/優位的”に既存のサービスを提供し、なおかつ“購入者/顧客”の要望に応じて出張して既存のサービスを提供する、“ガンバレ! 努力応援プラン”」

 そう述べてから、またホワイトボードに必要事項を書き込みます。

「なるほど、なるほど、なかなかいいんじゃないですかね」

 会議机を囲んで座る人影の中の、ひとりの初老の男性が言いました。オールバックにされた白髪に、堅苦しさのないジャケットを着ています。左の手首には、実用性やファッション性よりも高級品色を重視した“いやみある”ブランド物の腕時計がありました。

「今後は、このふたつのプランをぐっと押し出していきましょう」

 という初老の男性の言葉に、ホワイトボードの前に立つ中年の男性と、会議机を囲む多数の人影はそれぞれ「ではその方向で」と首肯して応じました。


 ホワイトボードの前に立つ中年の男性と、会議机を囲む多数の人影は、それぞれ同じ呼称で呼ばれていました。“先生”と呼ばれていました。

 この場に居る面々から首肯を得た初老の男性は、ふたつの肩書きを持っていました。“理事長”と“校長”というふたつの肩書きを持っていました。


 とある時代の、とある国の、とある学校の、とある会議室に、会議机を囲むようにして座っている多数の先生たちの姿がありました。“学校教育”というサービスに関するビジネスの話をしている先生たちの姿がありました。


 とある時代の、とある国では、学校の教育は“顧客”に提供する“サービス”という“商品”になっていました。


          *  *  *


 学校の教育がサービス業になったとき、

 果たして、ヒトは育つのだろうか?

 あるいは、どのように育つのだろうか?



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