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小話:其の参拾参《がくしゅう(仮題)》

【その“背中”を見て、子は育つ】

《がくしゅう(仮題)》


 彼には、生徒会総会長という肩書きがあった。彼の通う私立の学園は、いまどき珍しい総生徒数が三千を超える大所帯の規模の大きな小・中・高等学校の一貫校で、生徒会総会長という肩書きは、その三千人超の生徒の先頭に立っていることを意味している。

 いま彼は、困難に直面した悩むヒトの表情をしていた。各部活動へ支給される部費の割り当てを決める会議が、難航してしるのだ。

 生徒数が多ければ、当然に部活の数も多くなる。部活の数が多くなれば、相応して部費の額も大きくなる。そうなると必然的に生徒会の運営は責任の重いものとなり、なおかつ、なかなかどうして困難を多々抱えることになる。

 部活の数があまりに多く、“生徒会/総会長/副会長/会計/書記”だけでは部の活動内容を把握しきれないので、この学園には“文化系部活動連合会”と“体育系部活動連合会”という生徒会とはべつの部活動を管理管轄する会が存在している。各部活の部長が、各部活に所属する者に推薦投票され、それによって選ばれた十五名から構成されている。

 そして部費の割り当てを決める会議で、このふたつの会は、より“自らたち”が充実するためになみなみならぬ心血を注ぐ。

 ――ゆえに。

 なかなかどうして話が進まず、まとまらない。

「そもそも、先に“数字/予算”を決めて、その決められた“枠内/予算内”で部活動するっていうのがおかしいと思うんだな。数字に合わせて、それを使い切ろうとするカタチでヒトが“活動/行動”するなんてさ」

 ぼそりと、小さめの声で愚痴るように彼は言った。

「それを私に言われても、困ります」

 ショートカットの黒髪をした、活発そうな印象の女の子が応えた。彼女には、生徒会会計という肩書きがあった。その印象的に、肩書きについて「ちょっと意外」との声が多々ある。

「でも、なんとなくわかる気はします」

 セミロングの薄い茶髪をした、どこか気だるげな印象の女の子が意を示した。彼女には、生徒会書記という肩書きがあった。その印象的に、肩書きについて「かなり意外」との声が多々ある。

「はぁ~」

 疲れきったふうに彼は、息を吐いた。

「なにかを参考にしてみたらどうだろう?」

 オールバックの黒髪をした、小柄で小太りな男子が提案した。彼には、生徒会副会長という肩書きがあった。その肩書き的に、「で、なにしてるの?」との声が多々ある。

「どゆこと?」

「会議を円滑に進めるための運営方法の参考を、求めてみたらどうだろうって」

「……例えば?」

「え? んんー、そうだなー、例えば――」

 生徒会総会長は、副会長の提案を受け入れてみようと思った。なかなかいいかもしれない、と。この場に居る全員にその旨を伝え、いまの会議は翌日にまわして、本日は終わった。


 ――そして。


 会議室には、汚い言葉のヤジが飛び交っていた。一部の武闘派を自称する者たちが、椅子をぶん投げる。

 会議は、とても酷く荒れていた。

 騒ぎを聞きつけた教師たちが、駆けつけてきた。けれど彼らは会議室の扉を開いて中を見て、あ然ぼう然と固まり立ち尽くす。

 ひとりの教師が、ふと我に返った。彼は、扉の脇に座って我関せずと本を読んでいる生徒会書記の女の子に気づき、事情を問うた。

 生徒会書記の女の子は本を見やったまま、ただ淡々と述べました。


「“大人/国会”から学んだ結果です」



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