小話:其の弐拾《その名はアンディーロイド(仮題)》
【突き詰めれば“それ”になる】
《その名はアンディーロイド(仮題)》
ひとりの男が、苦悩に満ちた表情で、
「なぜだ、なぜだ、なぜだっ!」
頭を抱えていました。
彼は究極の“ロボット/アンドロイド”を生み出さんと日夜研究している、志と熱意のある博士でした。
ヒトのような自律した行動が可能で、なおかつ情報を収集蓄積し成長してゆく頭脳。それが博士たるこの男の求める目標であり課題でした。まさしくヒトの“それ”を解明するに等しい研究開発です。そしてだからこそ彼は、頭を抱えていました。
苦悩の果てに、彼の脳裏に“ひとつの到達点”が鮮明に浮かびました。
彼は研究資金を投入して、しかるべき“モノ”を入手し、そしてしかるべき手順を踏んで――
ついに、彼の“求める目標/それ”は誕生しました。
彼はただちに研究資金提供者たちを呼び集め、資金提供に感謝の意を表しつつ、
「それでは、ご覧ください。これが私の“アンディー”です!」
誇るように“それ”をお披露目しました。
集められた資金提供者たちは、そろってざわめき、そして言葉を失いました。
その様子を、彼は満足気に眺めました。
ひとりの資金提供者が、
「――博士、おめでとうございます」
ふと気が付いたふうに祝いの言葉を述べました。
「かわいい、“赤ちゃん/お子さん”ですね」