小話:其の拾四《青たぬきネコ型ロボット(仮題)》
しばしば頭の中のタイムマシンで未来を見る――
《青たぬきネコ型ロボット(仮題)》
ふたりの男が、夕焼け空の下の公園の粗末なベンチに腰掛けていました。
ひとりの男は、缶ジュースを片手に、その景色を楽しむように夕焼け空を見上げていました。
ひとりの男は、缶コーヒーを片手に、その苦悩に耐えるように地べたを見つめていました。
「……もう、ダメだ。やっぱりボクには無理だったんだ。……ボクには、……“夢を現実に変える”才能なんてなかったんだ。ボクは、もうどうしたら……」
「はあ、まあ、あれだな。こうゆうときって、決まって“頑張れ”とか言うけど、オレはそもそも“頑張る”って言葉が使うのも使われるのも嫌いだから、オレはお前に“頑張れ”とは言わねぇよ? そもそもオレがお前の人生の出来事にアレコレ口出しする理由がねえし。なによりお前の“道/人生”なんだから、お前の足で歩け。もし慰めが欲しいなら、オレ呼び出さねぇで、優しい彼女を作るか、お優しいママンに電話すりゃいい」
「…………そうだよね。急に呼び出してごめん」
「いいさ、いいさ、気にするな。ジュースおごってもらえたし。オレとしては、損はしてねぇ」
「……そうか、ならよかった」
「ところでさ、好奇心から訊きてぇんだけど」
「……なんだい?」
「お前は“ドラえもん/希望/夢”と出逢って、タイムマシンを借りたのか?」
「…………え?」
「だってさ、まるで未来を見てきたかのような言いぐさだったじゃん。無理だった。才能なんてなかった。――てさ。なんでお前もうすでに“結果/未来”を知ってるんだよって、そりゃあ誰だって疑問に思うだろ? そんで未来を見るっつったらタイムマシンだろ? で、タイムマシンっつったらやっぱ“ドラえもん/希望/夢”だろ?」
「ん、んん……そう、……かな?」
「そうさ。お前は“ドラえもん/希望/夢”と出逢ったからこそ、未来を見たんだ――と思うぜ?」
「…………そう、だね。確かにボクは、“ドラえもん/希望/夢”と出逢って、タイムマシンを借りて、そして未来を見たよ」
「それで?」
「それで、って……」
「“ひとつの未来/ひとつの可能性”を見て、それでそれからお前はどうするんだよ? せっかく“ひとつの未来/ひとつの可能性”が見れたんだぜ? 未来は過去の“結果/積み重ね”でしかないんだ、ひとつの先が見えてるならそっちに行かねぇようにすりゃあいいじゃねえか。それともなんだ、まさかこのまま自分をかわいそがって終わるのか? それじゃわざわざ“ドラえもん/希望/夢”にタイムマシン借りた意味がねえぞ?」
「それは、……それは言うのは簡単だけれど、…………ボクは、……ボクは、これからどうやって“ドラえもん/希望/夢”と“付き合って/向き合って”ゆけばいいんだろう、……それがよくわからなくて」
「そりゃあオレじゃなくて、“ドラえもん/希望/夢”との付き合いかたを熟知してらっしゃる“のび太”大先生に訊いてくれよ」
「…………はっ、ははは! 確かにっ、確かにそうだね!」
「お、おおう……。どうしたんだよ、急に笑っちゃって」
「いや、まさか“のび太”くんに“とても大切な事”を教えてもらうことになるなんて考えもしてなかったからさっ。……ふ、はははっ、いまさら“のび太”くんのスゴさを思い知ったよ」