小話:其の拾壱《生まれ変わったら(仮題)》
可能性は無限大――
《生まれ変わったら(仮題)》
ふたりの男が、喫茶店のカフェテラスでお茶を飲んでいまいた。ひとりはカッチリとしたスーツ姿で、ひとりはカジュアルなジャケット姿でした。
「いやぁ、何年ぶりだっけお前と会うの」
「……どれくらいだろ」
「お前、この前の同窓会に来てなかったろ?」
「……いろいろ立て込んでたから」
「そうかー、それじゃあしょーがないよな」
ふたりはしばし“つもる話”をしました。
そして早々にネタが尽きました。
「なあ」
「……ん?」
「お前は、生まれ変わったら“なに”になりたい?」
「…………」
「なんだよ、ヒトに訊くなら自分から先に言えってか?」
「…………」
「睨むなよ。眼力あり過ぎだよ、お前」
「…………」
「わかったよ、先に言うよ。だから怒るなよ」
「……いや、べつに怒ってないけど」
「そうか? ……まあ、いいや。オレが生まれ変わったらなりたいモノだけどな――」
「…………」
「――というわけだ。なかなかロマンティックだろ?」
「……そうだね」
「で、お前はどうなん?」
「…………べつに、生まれ変わりたいとは思わない。……こんな壁だらけの人生、辛すぎて二度も体験したくない」
「なんだよお前……、暗いなぁ。夢を持とうぜっ!」
「……いや、夢なら持ってるよ。……ただ、来世に持ち越す予定がないってだけ」