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いいよ。教えてあげる その3

 第2ゲーム、Kはひとまず順調に初手からメグを出せたようだ。

 対する可哀相女は、ロッテを引けなかったのだろう、アンヘルをカーナし、一枚伏せカードを置いた。


「ホントはとっておくはずが、一戦目で奥の手を使っちゃうなんて。わざわざ二段構えにしたオタクさん、なんて可哀相なのかしら」


 ハッタリのつもりかもしれんが、手の内を無駄に晒したのは貴様の方だ。

 出てくると分かっていれば、卵もシータも恐るるに足らず。

 厭味ったらしい流し目に、俺はピースサインを返してやった。


「奥の手ならまだまだあるで。お前と一緒でな……」


 間に受けるな、K。

 奴の目的は揺さぶりをかけることだ。

 敵は初手の時点で事故っている。

 勘ぐって変な手を打つと、勝てる試合を落としかねん。


「奥の手か……やっぱシータだけじゃなくて、鏡も入ってんのかな?」


 あんな見え透いたハッタリに、アキノリまで惑わされるとは嘆かわしい。


「ないな。シータと役割が被っている」


 使いきりの上に外す可能性がある鏡と、置きっぱなしにできるシータ。

 卵で出せる点を鑑みても、シータに一元化した方が効率的に運用できるだろう。


「あのデッキに鏡を入れるという発想からして、構築センスの欠如を感じさせるな」


 第一可哀想女のデッキに、まだ使っていないカードなど殆ど残っているまい。

 既に主軸となる低~中コストのイコンが4種類も判明しているし、高頻度で卵に引っかけるためにはそれぞれ4、5枚積みが必要だ。

 防御用に『甘い香り』を入れていると仮定するなら、残りのスペースはほんの数枚。

 奴の言う奥の手は、後半戦用の大型カードと見て間違いない。


「よしんば鏡が入っていたとしても、天秤はフォロアだ。通常のスペルのように、見てから鏡で跳ね返すことは出来ん」


 クローナやアニスをブラフに使って、空振りして頂く手もある。

 俺の弁舌に降参し、アキノリは鼻を鳴らした。


「ウチのターン、ドロー」


 可哀相女の伏せカードを睨みつけ、Kは手を止めてしまった。

 不味い。

 盤上は優性であるにもかかわらず、奴のペースに嵌められている。

 当然機を逃す可哀相女ではなく、影よりも速くKの動揺につけこんできた。


「可哀相なお姉ちゃん……このカードが恐ろしくて、カードを選ぶことも出来ないなんて!」


 いいよ、教えてあげる。

 可哀想女は、伏せカードの正体を明かした。


「このカードはね、『魔法の鏡』なんだ♪」


 可哀想女め、こうもあからさまに罠を仕掛けてくるとは。

 世界嫌な奴ランキングに加えて、世界ペテン師ランキングも狙っているわけではあるまいな。

 鏡は本来不意打ちで使うカード。

 常軌を逸脱した言動に、ギャラリーも戸惑っている。


「俺の読み当たったったし」

 

 アキノリめ、この非常事態にガッツポーズを決めやがって。

 貴様は一体どちらの味方だ!

 俺は怒りを抑え込み、冷静にアキノリを諭した。


「馬鹿め、ただのハッタリに決まってるだろう。天秤だけは勘弁して下さいという、要は命乞いに過ぎん!」


 見るがいい、追い詰められた奴の野卑な表情を。

 偽善者の仮面が剥がれ落ち、圭角を突き出した姿。

 唇をゆがめる角度など、まるでKではないか。


「マロとの勝負では出てこなかったでオジャルが、可哀想女の手口からすれバ……」


 トリシャさんまで、一体何を言い出すのだ。

 これこそが可哀相女の狙い、奴の仕掛けた罠だということに、なぜ誰も気づかない。

 卵で呼び出したイコンを除去から守ろうという、姑息な奸計に決まっている。

 疑わせることで確実に天秤を使わせるなどという屁理屈のような手が成立するものか。

 そんな逆張りが許されるのはせいぜい可哀相女の妄想の中だけであろう。


「誰がギャンブラーや、自分滅茶苦茶狙っとるやないかい」


 憐れみに上書きされたポーカーフェイスの下を、Kはじっと窺っている。

 この怖いもの知らずは、敢えて奴の駆け引きに乗るつもりだ。


「そんなつもりじゃなかったのに……どうして分かってくれないの?」


 私が外すことなんか、ありえないっていうのに。

 胸に手をあて、くねくねツイストを決める可哀相女。

 一戦目を無様に落とした癖に、まだ理解していないというのか。

 貴様の自信など、悪運の前借で築き上げた妄想に過ぎん。


《おやー? 第6テーブル、進行が止まってますね》


 水木ミラーの解説を止め、実況が戻って来た。

 二人の会話を聞いていないと、この状況を理解するのはまず不可能だろう。


《重大な事故が起きているのか……しかし、プレイヤーの真価は逆境を乗り越えられるかどうかで決まる!》


 何という中身がありそうで中身のない一般論だ。

 分かっているような風を必死に装っているのが益々以て痛々しい。


「ええやろ。コイツで確かめたる」


 鏡があるんやったら使ってみい。

 Kはおもむろにカードを伏せ、可哀相女を挑発し返した。 


「Kめ、バクチにバクチを張り返しやがった」


 可哀相女の証言を間に受けて、クローナをスタンバイしてしまったのだろうか。

 アンヘルはメグでも倒せるが、卵を使われると1-1で相手にターンを渡すことになってしまう。

 ギャラリーが見守る中、奴は間をおかずにアンヘルを動かし、そしてスペルキャストを宣言した。


「スペル『魔法の鏡』をキャスト。スタンバイ中のカードを開けて頂戴」

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