お届けものですよ
「すごい時代よね」
僕は頷いて見せた。うまく笑えているだろうか?
確かにテクノロジーの進化は早い。新型ウイルスにより在宅ワークが声高に叫ばれて。
そのなか【VRC】が開発された。
いわゆる仮想空間都市である。その反面――彼女の手をつなぎながら思う。温度が感じない。
本当の彼女は今、ヨーロッパに留学中で。都市封鎖で帰国できない。会いたいなんてワガママ言えるはずもなかった。
ログアウトすたタイミングで、ドアのチャイムが鳴る。モニターの確認もせず無気力にドアを開けて――。
「お届けものですよ」
さっきまで聞いていた声が僕の鼓膜を揺らす。
僕の胸に飛び込んできた、暖かい存在を受け止めて。
――君をビックリさせたかったの。
第75回Twitter300字SS
テーマ「届く」でした。
本文で書ききれなかったので補足。
※VRC
バーチャル・リアリティー・シティー
仮想都市空間で仕事、教育、交流ができる次世代SNS・オペレーティングシステム。
自動翻訳をしてくれたり、相性が良いユーザーを選択してくれたりと、
AIによるスマートサポートアシスト機能つき。
都市封鎖が解除されたのを、彼に伝えられていなかったのは
【VRC】のせいだったとか、どうとか?
うん、300字で今回、書ききれなかった私を お許しあれ




