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たまにはこんな夢も
疲れている自覚はあった。ただ紅茶を飲んで、こんなに睡魔に襲われると思わなかった。必死に睡魔に抗うが、その抵抗も虚しく夢の世界に落ちる。
「睡眠薬を混ぜるなんて、殿下への背信です」
宮廷魔術師の彼女は複雑な表情を隠せない。一方の近衛騎士の彼女は悪びれた素ぶりなく、ニンマリと笑んだ。
「言って聞くような主じゃないでしょう?」
確信犯の笑みを浮かべる。
「でも王子が倒れたら、この国が回らなくなるでしょ?」
「それは……」
「まぁボクにとって国はどうでも良いんだけれどね」
眠る主の髪を無造作に撫でる。
「キミがいないとボクが困る」
「それは私だってーー」
そんな言葉が夢の断片として残って。たまにはこんな夢も良いね――。
Twitter300字SS参加作品。
第71回テーマ「眠い」でした。




