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乱舞
モニターから見ていた世界が全てだった。ラボでは全てが管理される。あてがわれた部屋には窓すらなくて。
繰り返される実験。私の手のひらの上で、煌々と燃える火炎。上手に壊したら、お父さんが喜んでくれた。
ある日――実験で一緒だった子が、私の手を引いた。その子の手には、液晶タブレット端末が。時々見せてくれた景色に目を奪われて。ココにはない世界が、広がっている気がして――。
でも私は、そんな世界には行けない。
そう思っていたんだけどな。
言葉にならなかった。あの子が私の手を引く。目の前では桃色の花弁が乱舞して。
でも、それ以上に暖かい手や言葉が、こんなにも溢れる世界があっただなんて。
第52回Twitter300字SS参加作品
テーマ「咲く」でした。




